お気に入りのシューズやウェアでモチベーションを上げる!
実業団ランナーから、昨年5月にプロ転向した神野選手。最近では、各地のマラソン大会にゲストランナーとして招かれる機会も増えた。一般ランナーが走る姿に、かつての自分の姿を重ねることもあるという。
「出場しているランナーのみなさんは、まさに十人十色です。自己ベストを目指してハードな練習に取り組んできた人もいれば、完走を目標に仲間と楽しく走る人もいる。ただ、みんなに共通しているのは、走ることが『楽しい』『気持ちいい』と感じていることです。僕自身も、走ることが楽しくてたまらない時期がありました。練習すればするほどタイムが縮まり、昨日の自分を超えることができる……その達成感から、ますますランニングにのめり込んでいったんです」
神野選手に、ランニングを始めたい人、または、過去に挫折した経験を持つ人に向けてアドバイスをお願いすると、最初に返ってきた答えは「カッコいいシューズやウェアを買うこと」だった。
「僕自身、お気に入りのシューズやウェアを手に入れると、今でも『早くこれを着て、履いて走ってみたい』という気持ちになります。現在はニューバランスからウェアとシューズの提供を受けていますが、新作が届くたびにワクワクして、次の日の練習が待ち遠しくなるんです。ランに臨むモチベーションを高めるには、とても有効な方法だと思います」
そして、第2のアドバイスは「レースに出場する」ことと神野選手は言う。
「走り始めて1週間ほど継続すると、走ることの楽しさ、気持ちよさに目覚め始めます。走るのって気持ちいいなぁ……そう感じたら、すかさずレースにエントリーしましょう。まだ早い、なんて躊躇することはありません。レースという具体的な目標ができると、日々のランでも『今日は少しペースを上げてみよう』とか、『もうちょっと距離を延ばしてみよう』と前向きな気持ちになるものです。そして、実際にレースに出場すると、結果の良し悪しに関わらず『もっと練習して、次のレースではこのタイムをクリアしたい!』と思うはず。ここまで来れば、もうランナーの仲間入りです」
そして、第3のアドバイスは「半歩先の目標を設定する」こと。最初から高い目標を設定してしまうと、達成できなかった時の敗北感に苛まれ、続ける意欲がなくなってしまいがちだ。神野選手自身も、『東京オリンピックのマラソンに出場し、金メダルを獲る』という大目標とともに、それを達成するための1カ月ごとの目標を立てているという。
「この、半歩先の目標をクリアしていくという方法は、大学時代、原(晋)監督が『柿の木作戦』と呼んでいたものです。柿の実を取って食べようとするとき、いきなり一番上の柿を取ろうとする人はいません。少し手を伸ばせば届く実から取るはずです。そして、取った実がうまいとわかったら、さらに上の実に手を伸ばす……こんなふうに、小さな成功体験を積み重ね、ふと気づくと『一番上の実を取るためにはどうすればいいだろう』と考えている自分に気づく。頂点を目指すなら、まずは半歩先の目標からということです」