正しいストレッチでケガを防ぎ、走力までアップさせる!

ランニングを楽しく継続させる上で、大きな障害となるのが「ケガ」。膝や腰を痛めて走るのを止めてしまったという経験を持つ人も多いだろう。そこで神野選手に、ランニングの前後に行うストレッチについて教えてもらった。これらは、青山学院大学の選手たちも実際に行っているものだ。

神野選手の軽やかな走りは厳しいトレーニングと入念なケアに支えられている

神野選手は最初に、走る前のストレッチについて解説してくれた。

「走り始める前には、体を温める必要があるので、肩を回す、脚を持ち上げるといったランの動作を取り入れた動的ストレッチを行います。ポイントは、筋肉を大きく動かして筋肉の温度を上げるという意識を持つこと。ここで紹介しする2種目を走る前に行えば、腕振りがスムーズになり、股関節の動きも良くなるので、走りの感覚が確実に変わるはずです」

そしてランニング後は、静的ストレッチでクールダウンを行う。

「僕自身は練習後に30分ぐらいかけてストレッチを行っています。時間のないビジネスパーソンの方は、ランニング後のケアに時間を割くことが難しいかもしれません。最初は『1日1種目』でも良いのでストレッチしてみましょう。そして、慣れてきたら1種目増やす。そんな感じで、体をケアする習慣を身につけていきましょう」

ここで紹介する「動的ストレッチ」と「静的ストレッチ」は、ケガを予防し、コンディションを整えるだけでなく、パフォーマンスアップにもつながるという。神野選手は最後に、初心者ランナーに向けて、こうアドバイスしてくれた。

「自分の走りをレベルアップしたいと思うなら、走る距離や回数を増やす前に、走る前後のストレッチを充実させることをおすすめします」

準備運動として行う「動的ストレッチ」

①肘回し

肘は顔に沿って真上に上げることを意識してほしいとアドバイスしてくれた神野選手

両手の指先で肩に触れ、そのまま肘を前から上に持ち上げます。頂点まで来たら、できるだけ肘を後方へ引きながら下ろし、最初の姿勢に戻ります。ポイントは、肩甲骨をできるだけ大きく動かすこと。3秒で1周するくらいのスピードで20回。逆回しも20回行います。

②脚の引き上げ

脚を肩幅に開いて立った状態から、片方の脚を1歩後ろに下げ、脚と上体が一直線になるように上体を前傾させます。次に、腿の付け根部分の筋肉(腸腰筋)を収縮させて上体を起こしながら膝を上方に引き上げます。左右20回ずつ行います。

ランニング後のケアとして行う「静的ストレッチ」

①ハムストリングスのストレッチ

片方の脚を前に伸ばし、反対の脚は膝を曲げ、伸ばした脚の下に置きます。このとき、伸ばした脚の膝は少し曲げておくのがポイント。最初に、爪先が上を向くように足を両手でつかみ、ハムストリングス(太ももの裏側の筋肉)をじんわりと約30秒伸ばします。その後、爪先を外側に向けて30秒、内側に向けて30秒ストレッチします。爪先の向きによって、異なる筋肉が伸びていることを意識しましょう。片脚が終わったら、もう一方の脚も同様に行います。

②腓腹筋のストレッチ

曲がった膝を伸ばす神野選手

足を伸ばした四つん這いの状態から、片方の足を浮かせます。そして、地面に着いた足のかかとを床につけたまま、膝をじんわりと伸ばしていくと、ふくらはぎ上部のストレッチを感じられます。その状態で30秒。片脚が終わったら、もう一方の脚も同様に行います。

神野大地(かみの・だいち)
1993年、愛知県生まれ。青山学院大学卒業後、実業団を経て、2018年5月にプロ転向。セルソース所属。今年3月に開催された東京マラソンで、2020東京オリンピック日本代表選考レースである「MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)」の出場権を獲得。9月の同レースに向けてトレーニングを重ねている。

text:Akira Umezawa
photograph:Wataru Mukai