BMW最大サイズのSUV「X7」の、ジャーナリスト向け試乗会が米国で開催された。意外なほどスポーティだ。
BMW「X7」は全長5150ミリの車体に、3列のシートを持つ大型SUVだ。米国が大きな市場となり、ライバルとしてキャデラック・エスカレードなどがあげられている。
2019年3月に私が試乗したのは「X7 xDrive 40i」だ。エンジンは3リッター直列6気筒ツインターボで、250kW(340ps)の最高出力と450Nmの最大トルクを発生する。日本導入予定のモデルである。
「X7」のジャーナリスト向けの試乗会というのが興味ぶかい仕立てだった。各国のチームがリレー形式でアメリカ合衆国を横断するのだ。
スタートは東海岸にほど近いサウスカロライナのスパータンバーグ(BMWの米国工場がある)で、フロリダ、ベイトンルージュ、ヒューストン、サンアントニオ……と走っていく。カリフォルニア州パームスプリングスが最終目的地だ。
私はその途中、メキシコ国境の町テキサス州エルパソからアリゾナ州フェニックスまで約500マイル(800キロ)を走った。フルタイム4WDなのだが、予定していた山岳路があいにくかなりの積雪に見舞われたため、終始オンロードでのドライブとなった。
感心したのは、疲労感がまったくないことだ。朝食のあとエルパソを出発。途中アリゾナ州フォートボウイでゆっくりとランチをとったうえで、フェニックスのスコッツデールには明るいうちに到着した。乗り心地はシートを含めて快適で、室内は静かなのが強く印象に残った。
疲労感のない最大の理由は、おそらく、ドライブが楽しかったからだろう。BMWはSUV(スポーツユーリティリティビークル)といわずSAV(スポーツアクティビティビークル)と呼ぶが、その理由が、大きなサイズの「X7」でもよくわかるのだ。
スポーツモデルにも搭載されている6気筒エンジンは気持ちよく回り、かつトルクもたっぷりと出る。加えてステアリングホイール操作への車体の反応はよく、エアサスペンション装着の足まわりはゴツゴツしていないが、レーンチェンジなどを気持よくこなすしっかり感を持つ。
自分の思いどおりに車両が動いてくれるので、「X7」がまるで身体の一部になったかのような操縦が出来る。そのため心理的な負担がまったくない。これこそ長い距離を走るグランドツアラーの必須条件だ。
ホイールベースが3100ミリもあるので室内は空間的余裕がたっぷりある。2列目はベンチタイプに加えて、オプションで独立タイプのコンフォートシートを選ぶことが出来る。
私が乗ったクルマはそのコンフォートシート装備だった。さいわい2人でドライブしたので、途中、ここに座らせてもらった。これはりっぱなリムジンだ。シートはクッション性もよく身体になじむし、専用の空調システムもある。しかも視点が高いので気分がいい。
米国では大型セダンでなく大型SUVを好む傾向にあるというのもよくわかる。日本だとちょっともてあますサイズだろうか。でも春には発売されるというので、快適な大型リムジンを探しているひとは、試すといいと思う。いままでにないドライブが体験できる。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。