アウディジャパンは、アッパーミドルクラスの新型「アウディ A6セダン」および同「アウディ A6アバント(ステーションワゴン)」を、2019年3月に日本発売開始した。5月にはプレス向け試乗会が開かれた。世はSUVブームの観があるが、「A6はセダンも販売好調」とアウディジャパンはいう。

実際にセダンにしてもステーションワゴンにしても、概して、SUVより乗り心地にすぐれるものだ。サスペンションアームの動きの自由度が大きいので、路面からのショックをよりよく吸収するからだ。

日本車ではトヨタ・クラウンやレクサスLSなどが気を吐くが、全体としてはいまひとつ盛り上がらないのがセダン市場の現状だ。しかしドイツ車ではアウディ、メルセデス・ベンツ、BMWと、セダンもステーションワゴンも人気が衰えていない。

左:クリーンで居心地のいいセダンの室内/右:後席のスペースも広びろとしている

新型「アウディ A6」は、2018年に日本発売されている「A8」および「A7 スポーツバック」と基本プラットフォームを共用する。2925ミリと長いホイールベースの恩恵でリアのスペースも広く、ドライバーズカーとしても、後席重視としても、幅広く使える多様性を持つ。

今回乗ったのは、2994ccのV6エンジン搭載の「A6 55 TFSI quattro」だ。セダンもアバントも、250kW(340ps)の最高出力と、500Nmの最大トルクを発揮するこのエンジンと、7段Sトロニック(ツインクラッチ)変速機を介して前後輪を駆動するクワトロシステムを持つ。

印象は、かなりいい。ドライバーズカーとしては、パワフルなエンジンと軽快なハンドリングで、走らせて楽しいクルマに仕上がっている。全長は4950ミリと大きめだが、運転席にいると、意のままに動く感覚なので、車体の大きさを感じることは少ない。

アクセルペダルを軽く踏み込んだだけで反応よく加速し、ブレーキは確実で、減速のかげんもドライバーの思いどおりに、というかんじの設定が上手だ。加速時は気持ちよく、ぐんぐんと速度に乗っていく。

試乗したクルマには、ダイナミックオールホイールステアリングと、ダイナミックステアリング、それにダンピングコントロールサスペンションからなる「ドライビングパッケージ」というオプションが搭載されていた。38万円のオプションだが、運転が好きなひとにはこれを選ぶことをお薦めしたい。

全長4950ミリ、全幅1885ミリ、全高1430ミリ(写真はS line)のセダン

ダイナミックオールホイールステアリングは電気モーターを使った後輪操舵機構で、高速では前輪と同じ方向に後輪が向くことで安定性をもたらし、低速では逆の位相を向くことで小回りを効かせる。それらと連動して、ステアリングホイールを切り込んだときにステアリングのギアレシオが変わることでスポーティにも快適にも感じられるダイナミックステアリングと、車体の動きをコントロールするダンピングコントロールサスペンションとが統合制御されている。

動力系統でも電気はうまく使われている。全輪駆動のクワトロシステムを持つが、燃費のために最大限の効率の追究がなされているのが特徴だ。ふだんは前輪駆動だが、高速などの低負荷時は、エンジンと駆動系じたいが切り離される。

ユニークなのは、アウディのセンシングシステムはつねに約0.5秒先の路面状況をチェックしていて、操縦の仕方とも関係するが、4つのタイヤを駆動したほうがいいと判断した場合、約0.2秒で後輪にも駆動力が伝達されるのだ。「滑ってからヨンクにするシステムより明らかに安全のマージンが高いもの」とアウディジャパンの担当者は胸をはる。

ステーションワゴンについてアウディでは伝統的にアバントと呼ぶ。スタイリングコンセプトの特徴としては、リアゲートをやや大きく寝かせることでスタイリッシュなイメージを強調している点があげられる。

左:アバントの全長と全幅はセダンに準じており全高は1465ミリ(写真はS line)/右:アバントの荷室容量は通常で565リットル

荷物の容量(新型の荷室容量は565リットル)が多少犠牲になるが、荷物のためにステーションワゴンを探しているひとは、アウディと同じグループのフォルクスワーゲンの「パサート」でもどうぞ、ということだろうか。

室内の静粛性は高く、さきに触れたように乗り心地もいいので、長い距離のドライブも快適だ。新型A6シリーズには2つの液晶画面に触れることでエアコンやインフォテイメントを操作できる「MMIタッチレスポンス」がそなわる。さまざまな点で内容が新しいのだ。

液晶画面に触れることでエアコンやインフォテイメントを操作できる「MMIタッチレスポンス」が備わる

価格は、「アウディ A6セダン55 TFSI quattro」が1006万円(税込)、同「アバント」が1041万円(税込)となる。ただし、サスペンションの設定が異なり、同時に一部の運転支援技術を標準でなくオプション化するなどした「デビューパッケージ」(セダン920万円、アバント955万円)も用意されている。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

Audi/アウディ