アルファロメオのセダン「ジュリア」に追加された「ジュリア2.2ターボディーゼル・スーパー」に、2019年6月に試乗した。日本での発表は2月だったので、ようやく乗れたのだ。よく出来たセダンである。

各界のブランドのなかには、ロマンチックな響きを持つものが存在する。(異論もあると思うけれど)女性の服ならシャネル、腕時計ならパテックフィリップ、オーディオなら昔のマランツ、男性用の靴ならレッドウィングなどは魅力的だ。クルマならアルファロメオだろう。

2016年に発表されたジュリアは、1960年代に世界各国のクルマ好きから愛されたジュリアのリバイバルだ。でも、たんに名前だけではない。戦前からレースで活躍してきたアルファロメオのブランドにふさわしい、すばらしい出来のスポーティセダンなのだ。

全長4645ミリ、全幅1865ミリ、全高1435ミリでボディ形式はセダンのみ

日本でも、スポーツカー顔負けの走りをする「クアドリフォリオ・ジュリア2.9V6バイターボ」や「ジュリア2.0ターボベローチェ」という、他に類のないモデルが販売されてきた。

ジュリアのよさは、ウルトラをつけたくなるぐらいシャープな動きにある。わずかにステアリングホイールを切っただけで瞬時に向きを変える応答性の高い操縦性や、軽く踏んだだけで猛烈な瞬発力を見せるエンジン特性など、スポーティなクルマ好きなら、絶対に乗るべき、と言いたくなる出来だ。

追加されたディーゼルは、ところが、運転のしやすさを追究したモデルである。乗り心地はしなやかで、ステアリングホイールもガソリンモデルほどクイックでない。室内の静粛性も髙く、試乗したクルマのように明るい色の車内に身を落ち着けていると、快適そのものなのだ。

Apple CarPlayとAndroid Autoに対応したコネクトシステム、シートヒーター付レザーシート、ハーマンカードンのオーディオシステムなどを備える
明るい色の内装が快適志向のディーゼルモデルによく似合う

2.2リッター4気筒エンジンは、140kW(190ps)の最高出力に、450Nmの最大トルクを発生する。最大トルクの発生回転数は1750rpmと比較的に下の回転域からで、アクセルペダルを強く踏む必要はない。しっかりと、落ち着いて、気持ちよく走ることが出来るのだ。

本国イタリアを含めてディーゼルの人気は高く、アルファロメオも長いあいだディーゼルエンジンを(専門メーカーからの供給だったが)セダンに載せてきた。今回は自社開発であり、どんなセダンを作りたいのか、開発陣はきちんと見据えていたのだろう。

メーカー発表の燃費は実燃費に近いWLTCモードでリッター17.2キロ
8段オートマチック変速機を介した後輪駆動

感心したのは、アルファロメオの分別だ。ゆったりした気分で走れるディーゼルモデルに乗ってみて、ジュリアだからといってすべてのモデルをスポーティに仕上げるのでなく、性格わけを明確にした判断を高く評価したい。

もちろん、ステアリングスピードが少しスローになったり、足まわりがソフトになったりしていても、コーナリング能力がいちじるしく落ちているわけではない。

カーブの大小にかかわらず、気持よく曲がっていく。かつ、比較的太い最大トルクを低めの回転数から発生させるエンジンの設定のおかげで、ブレーキングによって速度を多少落としてコーナーに入った後の再加速性はするどい。

後席は着座位置がやや低めだがスペース的余裕は充分

シートはベージュ色のレザーで、明るい色のウッド調パネルが各所に使われている室内は、雰囲気がとてもいい。スイッチ類が少なくてクリーンな造型のダッシュボードも、おとなっぽい雰囲気で好感がもてるものだ。

思ったのは、「ジュリア2.0ターボベローチェ」と、この「ジュリア2.2ターボディーゼル・スーパー」、2台持ちするもアリだなということだ。アルファロメオはたんにブランドで終わっていなかった。実力があるのだ。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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