世界最速で高級車になった、と言われてきたレクサスが、2019年で30周年を迎えた。

これまでの歩みを振り返り、これからへの展望を開発者やデザイナーが語るジャーナリスト向けの国際イベント「Lexus Milestones(レクサス・マイルストーンズ)」が7月にコスタリカで開催された。

リベリアという北のリゾート地を舞台に開かれたこのイベントでは、ユニークなことに、1989年発表の第1号車「LS400」をはじめ、「SC」「RX」「GS」なども初代モデルが揃った。最新のレクサス車との比較試乗も出来るという内容である。

私は、当時デトロイトでの自動車ショーでベールがはがされるのをこの目で観た「LS400」(セルシオはもちろん運転したことがあるが、左ハンドルの「LS400」は今回が初体験)を運転できた。

加えて、日本ではソアラだった「SC400」(91年)、高級SUVの先駆だった「RX300」(98年)、それにハイブリッドSUVとして話題を呼んだ2代目RXの「RX400h」(05年)も、新車当時いらい、じつに久しぶりにステアリングホイールを握って走らせたのである。

右手前に「UX」、奥に「GX」(日本名LX)とレクサスはSUVが充実している

個々のモデルの印象はあるけれど、一つ、共通して感じられたことがある。それは、どのモデルも静かで、乗り心地がよく、ドアの開閉音や操作類の感触にいたるまで作りがいい、ということだ。

レクサスって90年代からこんなに完成されていたのか、といささか驚いた。とりわけ「RX400h」にいたっては、モーターの作動範囲こそ最新のハイブリッドモデルより狭いものの、全体の出来のよさは特筆ものだ。

路面の凹凸をきれいに吸収する足まわりの設定のよさと、トルクがたっぷりあるパワートレインのおかげで、いまでもりっぱにグランドツアラーとして通用すると感心した。

レクサスインターナショナルで車両開発を統括する佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデントもリベリアに来ていて、折りに触れてレクサスの考えを披露してくれた。

「LC500」の前に立つレクサスインターナショナルの佐藤恒治エグゼクティブバイスプレジデント

佐藤氏によると、私が強い印象を受けた上記の静粛性、乗り心地、つくりは、「ずっとレクサス車のコアバリューに据えてきたもの」だそうだ。

トヨタ車では飽き足らない北米の購買層向けとして1983年にプロジェクトがスタートし、ライバル車(メルセデス・ベンツ、BMW、キャデラックなど)を超えるものを目指した結果がレクサスとして実を結んだのだった。

私が、静粛性と乗り心地とつくりのよさに感心したのは、いまもレクサスの新車に乗ると、同じ部分を強く意識するからかもしれない。モデルごとに提供価値が変わると、ブランドのコンセプトは曖昧になる。それがよくわかっているのだ。

舗装の状態もよく交通量が少ないリベリアの道で、2019年5月にマイナーチェンジを受けた「RX450h」を走らせるチャンスもあった。ボディ構造に接着材を多く使い、固いばかりでなく“しなり”を生んで気持ちのよいハンドリングを実現しているモデルだ。

車体と足回りとフロントグリルを中心とした外板などに大きく手が入った最新の「RX450h」

最新の「RX450h」でも、静粛性と乗り心地とつくりのよさはしっかり堪能できた。加えてより積極的に運転を楽しませようという考えがみえる。現行の「LC500」に乗ったら、スポーティなキャラクターが際だっていて、レクサスは従来のありかたから、一歩先に進んだようにすら感じられた。

「レクサスの過去30年は、ブランド確立の第1期、レクサスの個性を際立たせトヨタブランドとの差別化をさらに進めた第2期、挑戦の第3期、となります。そして、2017年のLCから第4期に入っているのです」

佐藤氏はそう語る。第4期がいつまで続くのか明言はなかったが、世界の趨勢であるCO2削減のためのEV(電気自動車)化の波も、第4期中にやってくる、ということだ。

そのときはモーターによる4輪駆動技術や、サスペンション制御などによる4輪制御技術などで、レクサスにしか出せない特徴で勝負するべく、現在、鋭意開発を進めていると佐藤氏。

1886年に化石燃料を燃やして爆発による力で駆動力を生む内燃機関を搭載したクルマが世に出、そのあと100年以上にわたって続いてきた自動車史において、最も大きな変化が総EV化とも言われる。

30周年のイベントは楽しかったが、40周年のとき振り返ると、レクサスはどんな歩みをしてきたことになるのか。リアルタイムでこのブランドの変化を見ていけるのは楽しみだ。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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