人気の町の人気商品

近頃、浅草の隣町・蔵前には、洗練されたカフェやこだわりの文具店が次々とオープンして賑わいをみせている。2016年に、国際通り沿いにオープンした「パティスリーFOBS」もその賑わいにひと役かっている人気店だ。

平日でも朝10時の開店と同時にひっきりなしに客が来店。多くの客が目当てにしているのは、ガラスケースのなかで端正なケーキに負けない存在感を放っている人気商品「ゴーフレット」である。

ゴーフレットは、ゴーフルとも呼ばれるフランスの銘菓。日本でも古くから販売している菓子メーカーがあるので馴染み深い人も多いだろう。丸くてパリパリッと軽やかに砕ける薄焼き生地にクリームを挟むタイプが一般的だが、FOBSのものはまったく違う。形は楕円形。生地は固くない。しっとり柔らかで、「半生」とでも言いたくなるような優しい食感だ。かみしめるとクリームに入っている砂糖がシャリッとはじけて、バニラとバターの香りが力強く解き放たれる。

「フランスで過ごした修行時代に、最も衝撃を受けたゴーフルを再現したものです」

安井義則シェフが、この看板商品ができるまでを振り返って語ってくれた。

8枚入りギフトボックス入りは3400円(税別)。10枚までつめられる
ゴーフレットは1枚ずつ個装されている。オフィスでも分けやすいので手土産として使い勝手がよい

フランスの銘菓を再現し、独自の味に昇華

もともとは家業を継ぎ瓦葺き職人として働いていた安井さんは、自炊をきっかけに料理に開眼。趣味が高じて、夜はレストランの厨房で修業するようになり、やがて料理の道一本に。あるとき「おもしろいかも」と何気なく入った菓子店の厨房で、すぐさまその世界の奥深さにノックアウト。「菓子づくりは一生飽きない」と、20代半ばでパティシエを志したのだという。

そうして本場の技術を身につけるべくフランスへ渡り3年ほど修業。現地で食べ巡った最中に衝撃のゴーフルに出合ったのだ。

「自分で店を出すときには、このお菓子をつくろうと決めていました」

帰国後、都内の名店で修業を積みながら、独立に向けて着々と準備を進めていた安井シェフは、試行錯誤を繰り返し2年の歳月をかけて衝撃の味を自分なりに再現。バターをたっぷり使うブリオッシュというパン生地に、ふくよかな香りに仕上がるようにブレンドした3種の砂糖とたっぷりのバニラビーンズでつくるバタークリームを挟んだ、どこまでもリッチな味わいの「ゴーフレット」が完成した。

生地のしっとり感が伝わるだろうか? クリームもしっかり厚みがあって香り豊か

通から通へ、ゴーフレットの評判が伝わる

FOBSのゴーフレットは持ち歩きに保冷剤を必要とする半生菓子だが、生ケーキほどに気を遣う必要はない。形崩れする心配のない焼き菓子と同じように気軽に持ち運べるので、手土産として買い求めるビジネスマンも多いという。

「近所の大企業にお勤めの方々も贔屓にしてくださっていて、よくゴーフレットをご購入してくださいます。取引先のお客様や会合の際の手土産にされているようです。わりとよくあることなんですが、『どこそこの会社の方からいただいて、美味しかったから私も手土産にしたくて買いに来ました』というビジネスマンの方もいらっしゃいます」

そう話すのは、シェフの奥様で接客を担当する木綿子(ゆうこ)さん。すかさず、安井シェフも言う。

「料理人のお客様も多く、やはり、シェフからシェフへと数珠繋ぎのように手土産にしてくださるんです。『味のわかる人にあげたい』と言ってくださる料理人の方もいました」

この特別な美味しさをあの人にも教えたい! そう思わずにはいられない、魅力を秘めた菓子なのだ。

ゴーフレットは1枚から購入可。4席ほどのコンパクトなイートインスペースがあるのでぜひ、自分の舌でもその味を体感してほしい。ちょっとした手土産用には、包装紙にくるんで青いリボンをかけてくれる。かしこまった席の手土産には、シャープな青文字が映える8枚入りギフトボックス入りがあるので、そちらをぜひ。

【店の方から一言】

「冷えている状態でお召し上がりください。冷蔵庫から出して2~3分後が食べごろです。ブラックのコーヒーとよく合います」(店主)

問い合わせ情報

問い合わせ情報

「パティスリーFOBS」
東京都台東区寿3‐8‐4
TEL:03‐6231‐7720
商品:ゴーフレット
価格:380円(税別)
販売:1枚から
日持ち:2日
営業:10時~19時 日曜・祝日は10時~18時 水曜定休、臨時休業あり。


text:Yoko Yasui
photograph:Hiroshi Okayama