もっともラグジュアリーな乗り物といえるヨット。レクサスが、富裕層ですら憧れる65フィート級のフライブリッジクルーザーを発売し、そのお披露目がフロリダで行われた。

「LY650」と名づけられたレクサスのヨットは、フライブリッジに、バウベッドという、定番的な魅力をそなえるいっぽう、スタイリングは斬新。ヨットの世界に新しい風を吹き込むモデルといえる。

ヨットの構成にすこしだけ触れておくと、フライブリッジクルーザーはいわば3階建て。真ん中に操舵のヘルムステーションとメインサロンがあり、下はオーナーズルームやゲストルームといった居住空間。

特徴的な丸みを帯びた船首部に2トーンの塗装など、斬新な手法が採用されている

いちばん上のオープンエア感覚のフライブリッジにもコクピットがあり、私が乗船した際、「LY650」のヘルムスマンはこのコクピットでラット(舵輪)を操っていた。

バウベッドとはバウ(船首)に設けられた、いわばデイベッド。眺めはいいし、風と陽光をからだで受け止めるのに最高の場所だ。たいていのヨットで、もっとも人気ある場所である。

「LY650」でのクルーズは、2019年9月に、フロリダ州マイアミから、約50マイル北上したボカラトンまでだった。その途中には、大きな規模でのボートショーが開催されるフォートローダデールがある。

ジャーナリストにお披露目が行われたフロリダのボカラトンを俯瞰する
お披露目に姿を表したトヨタ自動車の豊田章男社長じしん、船舶免許を持ってヨットを楽しんでいる

ボートショーには、フェラーリといった高級車など、およそ世のなかで“高級”とされるものが多数出展される。その意味で、ヨットの世界こそ、本当のラグジュアリーライフスタイルの要素が凝縮しているのかもしれない。

「LY650はクルマにとどまらない驚きと感動の提供に向けた挑戦」とは、レクサスインターナショナルの澤良宏プレジデントの言葉だ。レクサスは、船体は米ウィスコンシンのマーキーヨット Marquis Yachts社と、船内のインテリアは伊のヌヴォラーリ レナード Nuvolari Lenard社と組んで、「LY650」を作りあげた。

専門メーカーの知見も借りたとはいえ、構造、内外装のスタイリング、細部の作り込み、それに電子技術をつかった航走性能などは、レクサスのこだわりを実現するために、クルマで培った技術が投入されているそうだ。

先進的なデザインに日本のおもてなし思想を融合したというインテリア(写真はオーナーズルーム)

それに富裕層がなにを求めているか、的確につかんで、それをプロダクトに落とし込んだのも印象的だ。ベッドルームをのぞくと、ホワイトのレザーを使った大きなベッドと、美しいウッドのウォールパネルが快適そうな室内空間を作り上げていた。

フロリダは幸いなことにハリケーンも来ず、青空の下でのクルーズが楽しめた。このときは大西洋でなく、内陸部の広い水路を北上したので、大きな波にも遭わず、リラックスしたものだったのだ。

「LY650」はボルボペンタ「IPS」エンジンを使う。オプションは3つ。800馬力の「1050」、900馬力の「1200」、それに1000馬力の「1350」だ。船体のカラーや、メインサロンやオーナーズルーム等の仕上げなどと含めて、ほとんどがオーダー可能である。

今回乗せてもらった船は、約4億5000万円だそうだ。すでにオーナーが決まっているという。これからは、中途半端な“高級”は商売にならないと言われる。ヨットに進出したレクサスは、ラグジュリーブランドとして“正しい”方向へと船出したのだろう。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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