――初めて買ったスーツはどこのブランドですか?

大学四年生の頃に就職活動用に「ブルックス ブラザーズ」で初めてのスーツを買いました。二年次のゼミの面接の際に、先輩に借りたスーツがたまたま「ブルックス ブラザーズ」のスーツでした。それで、なんだかすごく気に入ってしまいました。

――今日お召しのものは、どんなスーツなのですか?

勝負服として着用しているもので、「リングヂャケット」でオーダーしました。最近はもっぱらここでスーツを作ってもらっています。知り合いにすすめられて一度オーダーしてみたら、気に入りました。毎年、春夏と秋冬で1回ずつオーダーをしています。

雑誌、ネット、そしてインスタグラムでトレンドをチェックしています。インスタグラムは国内外を問わずトレンドを容易にチェックできるので、最近よく見ていますよ。オーダーする際は、毎年微妙に違うスーツのトレンドを気にしつつも、自分のスタイルから大きく逸脱しないように注意しています。

――お買い物はどこでなさるのですか?

散歩やコーヒーブレイクのついでに、南青山に服を見に行きます。「アスティーレ ハウス」というセレクトショップによく行きます。イタリア系を中心にしつつも、ヴァンズのバリエーションをそろえてるなど、日本らしいミックス感覚を思わせる面白いセレクトが私の好みです。

――シャツやネクタイ、靴のこだわりも教えてください。

今日着ているシャツは「フィナモレ」ですが、色々と着比べているので、同じブランドで統一してそろえてはいません。

ネクタイはネイビー系が好みです。社会人になって色々な色柄を試して、結果としてネイビーに行き着きました。いらないものを断捨離していくうちにネイビーが残りました。

靴は「クロケット・ジョーンズ」を履くことが多いですが、デニムに合わせるときは「オールデン」です。エレガント過ぎず、華奢過ぎないスタイルが好みですね。

――腕時計や鞄にもこだわっているのですか?

腕時計はデザインに一目惚れして購入することがほとんどです。今日は愛用している「フランク ミュラー」を選びました。スーツには「ゼニス」、カジュアルな装いの時は「ベル&ロス」を合わせることが多いですね。海外出張の際は「ロレックス」や「カルティエ」を選んでいます。特に「ロレックス」はもはやブランドとして世界共通言語なので、着けているだけで話しかけられたりして、会話のきっかけになることがよくあります。

鞄はこの頃「ザネラート」のものばかり使っています。去年の秋冬に出た、MとLの中間のM+というサイズがおすすめです。大きすぎないサイズ感で、仕切りが付いているのでPCをビシッと入れることができます。この「ザネラート」のブラックのカバンを買ってからは、スーツにもカジュアルにも使いまわしています。

――イタリアブランドがお好きなのですね。

そうですね。ですがアメリカにいた頃は「Jクルー」をよく利用していましたし、「オールデン」も好きですよ。ヨーロッパのブランドに、アメリカのブランドをいかに合わせるか。そんなことを考えるのが好きですね。日本的ミックスの感覚と言いましょうか、それこそ私が青春を過ごした渋谷っぽいじゃないですか。

ファッションに限らず、異なるもの同士の調和を取ることを日本人は得意としていますよね。自分から一方的に主張するのではなく、ある程度理解を示しながら、最終的にいいものにまとめていく。レノボのグローバル本社で、M&Aの買収先のインテグレーションをしていたこともあるのですが、そういう場面でも日本人の気質が生きました。主張しすぎずに傾聴し、噛み砕いて細部に至るまで取捨選択し、いいものを抽出することに日本人は秀でていると思います。

――経営者のようにリーダーとなる人物には欠かせない要素ですね。

自分が持つ力や自分の意思を伝えることがリーダーには必要です。そもそもリーダーとは肩書きに依らず、自然発生的に現れるべきだと考えています。たとえば原始時代に狩りにいったとしたら、自然と集団を統率するリーダーが現れるはずです。確固たるビジョンを掲げ、周囲を巻き込むナチュラルなパワーが企業を率いる経営者にはなくてはならない。身に着けるその人の価値観を周囲に伝える服は、自分の内面のパワーを表現するために非常に重要な鍵を握っているのです。

留目真伸/Masanobu Todome
1971年、東京都生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。トーメン、モニターグループ、デル、ファーストリテイリングを経て、レノボ・ジャパンに入社。NECとのPC事業統合や米国本社の戦略部門にてM&Aに主要メンバーとして携わった後、現職。NECパーソナルコンピュータ社長も兼任。

text:Lefthands
photography:Isamu Itoh
hair & makeup:RINO