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いただきものネクタイや時計を、大切に使っている
――加盟店のオーナーの前で話すことも多いと思います。そのときファッションで気をつけていることは何でしょうか。
私の一番大事な仕事は、加盟店のみなさんが私の話に賛同してくれて、澤田と一緒にやってやろうという気持ちになっていただくことです。今この瞬間も全国17000店舗で約20万人のストアスタッフの方たちが頑張ってくれています。その人たちのためという意識は常にもっています。だから服装も失礼のないものが基準です。
とくに人前で話をするときは、ピシッとした服装でないと嫌ですね。柔道の選手が試合前に帯を締め直すような感覚です。鏡の前で「よし勝負するぞ」と気合を入れます。
――今、着ることの多いスキャバルのスーツはオーダーですね。若いころからオーダーでしたか。
いえ、最近の話です。それまでは友人がイタリアのブランドを扱っていて、スーツからシャツ、靴までをまとめ買いすることが多かったですね。それらはすべて後輩にあげてしまいました。けっこういいものだったんですよ(笑)。
私の場合は、既製服でもジャストサイズのものがわりとあるんですね。もちろんそのための体型維持には注意を払っていますが。
――ネクタイにはこだわりますか?
自分で買うことはほとんどありません。いただきものが多いですね。あとは義理の父の形見とか。義母から「身に付けてほしい」と大量にいただいたので、喜んで締めさせてもらっています。昔の流行で太いネクタイだと、義母が気遣ってわざわざ細めにお直ししてくれたものもあります。
――きょう腕にはめている時計はどこのブランドですか。
実はこれもいただいたものです。以前SEIKOの「ASTRON」が発売されるときに、この時計を「身に付けてほしい1人だ」と選んでいただきました。今でもありがたく使わせていただいています。
歳相応の相手に失礼ではない服装を心がけています
――ファッションで失敗したことはありますか。
服も買って失敗したり、その都度、周りから「似合っている」「似合っていない」と言われたり、仕事と同じでひたすら実践しながら学んでいくものです。写真で昔のかっこうを見て「なんだこれ!」と驚くこともありますよ(笑)。
今でも覚えているエピソードは、経済産業省の会議に呼ばれたときのことです。投資ファンドを運営している時代に、当時の日本では画期的な投資の仕組みをつくって注目を浴びたこともあって、その説明にうかがいました。大臣や著名な経営者が居並ぶ中で、私はジーンズとポロシャツというカジュアルな服装で部屋に入りました。振り返れば、これは場違いで、失礼だったと思います。でも、若いときはそんな失敗がありました。
――最近、ビジネスの場でもカジュアルなスタイルが増えています。また、能力があれば服装は関係ないと考える人も多くいますが、どうお感じでしょうか。
もちろん仕事ができるならカジュアルでいいと思いますよ。私もカジュアルスタイルで仕事するときもあります。しかし、ある年齢にいったときに、いつまでもカジュアルしか着こなせないのは恥ずかしいことだと思いますよ。ビジネスマンたるもの年齢やポジションにふさわしい服装を自分で選べるくらいにはなっておいたほうがいいでしょう。
愛用の逸品~仲間からもらったフェリージのバッグ
澤田貴司/Takashi Sawada
1957年生まれ。上智大学理工学部卒業後、81年伊藤忠商事入社。97年ファーストリテイリング入社、98年副社長。2003年投資ファンド「キアコン」設立。05年企業支援会社「リヴァンプ」設立。16年9月より現職。
text:Top Communication
photograph:Hiroshi Noguchi
hair & make:Tetsuya Sawada