シャツで自己演出
トーセは39年間、ゲームソフトや各種コンテンツの企画開発を続けてきた会社です。いままでに開発してきたタイトル数は2300以上。業界でも最多ではないでしょうか。当初は商業施設にあるアーケードゲーム機を開発・製造する会社でした。2~3年後には家庭用ゲームの開発に戦略を変更し、メーカーから増え続ける開発依頼に応えるため、メーカーになる野望を捨て、受託開発を極める道を選びました。
ゲーム業界人の服装は非常にカジュアルです。社員の多くはTシャツにジーンズなどで働いています。そういったところにスーツで出かけるとかなり浮いてしまいます。かといって私は他社の社外取締役を引き受けていたり、財界の会合に出たりすることもありますので、カジュアル一辺倒にもなれません。午前中は公的な仕事、午後からはお客様を訪問するといった日も多いのです。
フォーマルとカジュアルを両立するのが、私のファッションのテーマです。見つけたのがシャツでの遊び。シャツはスーツと違ってさまざまに変化を付けられます。襟の形やポケットの付け方に始まり、ボタンホール一つひとつの色をすべて変えるところまで楽しめます。
“裏方”を存分に生かす
私がいつもシャツをオーダーしているお店はどんなリクエストにも応えてくれます。今日着ているこのシャツは襟が内側に少しカーブしていて収まりがよく、ノーネクタイでもとてもキレイに見えます。上着を羽織っていると見えないところに刺繍を施す演出もしています。上着を脱ぐとさまざまな刺繍が現れ、ちょっと華やかなシャツに早変わりします。注文していないのに店名の刺繍までちゃっかり入っていますけど(笑)
シャツはオーダーしてもスーツほど高くないし、バリエーションも豊富。しかも面白い刺繍は会話のネタにもなります。みんな何で、シャツでオシャレしないのかな、と思いますね。ビジネスファッションの“裏方”は意外と使えます。
ゲームソフトの受託開発も裏方といえます。当社の場合、メーカーから開発費と運営費、そしてロイヤルティーをいただきますから収益が安定しています。京都には裏方で世界を席巻する企業が意外と多いのです。その点では、当社も京都らしい企業といえるかもしれません。
愛用の逸品~シーンに合わせて付けるラペルピン
齋藤 茂/Shigeru Saito
トーセ代表取締役会長 兼CEO
1957年1月生まれ。京都府出身。立命館大学理工学部電気工学科卒業。2015年より現職。また、京都を中心とした経済・文化振興団体の理事や委員、裏千家今日庵老分や京都ブランド推進連絡協議会会長などの公職も兼任している。
text:Top Communication
photograph:Kunihiro Fukumori
hair & make:Aya Kajio