個性が強すぎず基本に忠実
当社は福島県いわき市で「スパリゾートハワイアンズ」を運営しています。“ハワイ”ですから私も現地にいるときはアロハ姿も多いですね。しかし基本のビジネススタイルは白シャツにスーツは紺系かグレー系。目立ちすぎないオーソドックスなスタイルは富士銀行(現みずほ銀行)に入行して以来、変わりません。
服装で一番大切にしているのは信頼感と清潔感です。個性を出しすぎて、お客様から嫌がられる格好はもってのほか。それに私はそういうタイプではありません(笑)
今日のスタイルは昨年、上皇上皇后両陛下がハワイアンズをお訪ねになったときに身に着けていたものです。スーツの生地はゼニアで、ネクタイはエルメス。ずっと愛用してきたブランドです。失礼にならない装いを心がけました。スーツは年2回ほど、長年付き合いのあるテーラーで作ります。店長さんとは十数年前からの顔なじみです。
社長に悪い情報は上がらない
目立ちすぎない姿勢は私の経営スタンスにも通じるように思います。やはりお客様が主役ですから、私は「一隅を照らす」精神を大切に考えて経営に当たっています。
お客様のニーズをきちんと把握するには現場を知ることが一番です。トップが部下に「悪い情報も含めて何でも言ってくれ」と指示しても、全部の情報が上がるわけではありません。机上で練った「お客様のため」のサービスが現場では的外れなこともあります。
実際に現場を歩き担当者と話して、現状や改善点を見つけ出すことが重要です。私が2013年にこちらへ来たときは、まず広いハワイアンズの施設を3周し、6時間かけて裏の裏まで見ました。疲れましたが、どこにどういう施設があるかよくわかりました。現場を回って気になったことの一つが清掃スタッフの制服です。上がグリーンに下がブルーで、いかにもという装いでした。
お客様はハワイアンズで非日常の時間を過ごします。清掃スタッフと出くわしたとき、以前の制服では夢から覚めてしまいます。そこで制服をアロハに替えたのです。最初は、みな恥ずかしがったので「なかなか似合うよ」と褒めたものです。アロハ・エンジェルと名付け、我々の事業を支える頼もしいスタッフとして生まれ変わりました。
愛用の逸品~初任給で買ったシルバーのカフスボタン
井上直美/Naomi Inoue
常磐興産代表取締役社長
東京都出身。74年、東京大学経済学部卒業。富士銀行(現みずほ銀行)入行。常務、みずほ情報総研社長などを経て、2013年にスパリゾートハワイアンズを展開する常磐興産顧問に就任。同年、社長に就任。
text:Akifumi Oshita
photograph:Tadashi Aizawa
hair & make:RINO