勝負のときは赤で決める

当社のビジネスは大半がBtoBで、4つの事業が柱になっています。業務用チョコレート事業、チョコレートの品質を調整する油脂などの植物性油脂事業、ホイップクリームやマーガリンなどの乳化・発酵事業、それと大豆加工素材事業です。たとえば業務用チョコレートは世界第3位で年間40万tを生産し、市販のアイスクリームやお菓子にかかっているチョコレートの7割ほどは当社が供給しています。

このような得意分野を持つものの、通常は表舞台に立ちません。その企業特性が私のファッションにも影響していると思います。今日は“勝負服”なので、あえて赤いネクタイを締めてみました。ふだんはブルー系が多く、あまり目立たず、相手に不快感を与えない装いが基本です。

勝負服はファッションセンスの高い知人にも相談し、チャコールグレーのスキャバルのスーツにも合う赤のネクタイとミロの絵が描かれたポケットチーフを選んでみました。

赤い色は昔から好きです。赤ん坊、真っ赤なウソなどの言葉があるように赤には原始性を感じます。学生時代の部活はサッカーで、試合では赤いシンガードストッパーを付けて気持ちを盛り上げたものです。

ここぞの場面で気合が入るという赤色はネクタイで取り入れた。周りに不快感を与えないために意識している控え目な装いは勝負服にも徹底されている。ビジネスパーソンに求められる清潔感と信頼感を醸すスーツスタイルだ

環境経営推進のC“ESG”O

私たちの事業の素材となるのはパーム油(アブラヤシ)やカカオ、大豆です。多くの食品メーカーは「おいしさ」と「健康」で世の中に貢献していることを誇りとしています。もちろん当社もそれは同じです。一方で、扱う主原料が環境問題と密にかかわりがあるため、他の食品メーカーよりも環境に与える“責任”を強く感じることがあります。

私の経営哲学の根幹には、「人のために働く」という考えがあり、社会の一員としてステークホルダーの立場に立った行動をとり、社会のためになる企業集団でありたいと思っています。売り手と買い手だけがよくても世間が満足しなければダメだという考え方があります。誰かが不満ならそれは攻撃の形で返ってきて長続きしません。日本の昔からの言葉で言えば「三方よし」が重要です。今の言葉に置き換えれば「サステナビリティ」や「SDGs」に重きを置いたESG経営でしょう。

それを具体化していくため、今年MOTやMOEにならって「MOS」を導入しました。マネジメント・オブ・サステナビリティです。環境保全や持続可能性を基本に置いた経営手法です。そしてMOS推進の責任者として「C“ESG”O」を新たに任命しました。世界でも稀な役職だと思います。

愛用の逸品~毎日早めに帰宅して散歩するときの必携品

健康を考えて毎日1万2000~1万5000歩くらい散歩するようにしています。仕事は朝型に変え、出勤は7時ごろで、その代わり夕方5時半ごろに帰り支度をします。いったん帰宅し、スーパーまで歩いて帰ってきます。店に入って「今日のトマトは真っ赤だ」などと観察するのが好きなんです(笑)。散歩は頭の活性化にもつながると思います。経営のアイデアが浮かぶのはたいてい歩いているときです。

清水洋史/Hiroshi Shimizu
不二製油グループ本社代表取締役社長
1953年生まれ。同志社大学法学部卒業後、不二製油株式会社入社。2008年の経営企画部長就任を経て、2010年に蛋白加工食品カンパニー長に就任。2013年より現職。同社で初となる営業系出身の代表取締役社長として、事業領域の拡大と経営のスピードアップを推進。

text:Akifumi Oshita
photograph:Kunihiro Fukumori
hair & make:Aya Kajio