入社式のタイは季節の色で

1998年の社長就任以来、基本はダークスーツにホワイトシャツで通しています。外出中、突然どなたかにご不幸があり、着替える間もなくお通夜に急行する場合もあります。今日のような格好ならネクタイを黒に替えれば参列可能でしょう。

ビジネスファッションで変化を出すのはネクタイくらいです。ふだんはレジメンタル。VAN世代でもありますから。入社式のときは桜の季節を意識してピンク系のネクタイを締めることもあります。

スーツはフルオーダーではありませんが、知り合いのテーラーで作ってもらっています。体形はずっと変わっていませんし、色も似たようなもので、特段違うスーツを依頼することはありません。強いて言えばシワになりにくい生地を要望するくらいです。国内の工場や営業所、お店に加え、海外出張もたびたびです。シワのできないスーツは重宝します。

公的な場所に臨むときはダブルカフスシャツ。シンプルなデザインが好みで、ジョージジェンセンのカフスを長年愛用している。ダークスーツとホワイトシャツで突然のフォーマルシーンにも対応できる

観察で消費者ニーズを察知

本社内にじっとしているよりも外に出ているほうが性分に合っています。今、ネットでたいていの情報が得られる時代です。しかし実体験で感じる情報はやはり違います。

ニューヨークや駐在拠点のあるパリには定期的に出かけます。現地では食文化やライフスタイルがどう変わっているかを観察します。たとえばパリではバゲットの製法が一時期、大量生産に向く方法に変わりました。でもそれでは美味しくないと最近は街の伝統的な製法によるバゲットのコンテストも開かれています。

また前回、パリに行ったときは、たくさんの人がシェアできる電動付きキックボードで街中を走っている様子に驚かされました。2年ほど前はありえなかった光景です。

社員にも、まず観察することが大切だと言っています。社内の常識で世の中を捉えると的外れになってしまいます。社会は想像以上に変化しています。それをつぶさに観察し、商品開発や品質管理に反映させていくことが重要です。

20年を超えてロングセラーとなっている食パン「超熟」も実はお客様の考え方や行動の変化を見ながら改良してきました。小麦本来の味わいを好む人が増えてきたので、余分なものをできるだけ抜き、それでも味が落ちないように研究開発を重ねてきました。だから誕生したときと今では全く同じ商品ではありません。

愛用の逸品~祖父から3代受け継ぐ指輪

ロータリークラブの会長経験者が持っている指輪です。そもそもは祖父のものです。現在はバッジに変わっていますから指輪タイプは存在しません。祖父が亡くなり、父が受け継ぎました。そして父が亡くなったとき、母から「今度はあなたが付ける番」と言われ、数年前に私も会長を経験したのではめるようになりました。代々受け継いでいくことの責任と重みを感じ、身が引き締まる思いがします。

盛田淳夫/Atsuo Morita
敷島製パン代表取締役社長
1954年、愛知県名古屋市生まれ。1977年成蹊大学法学部を卒業。日商岩井(現双日)を経て、1982年に敷島製パンへ。常務・副社長を経て1998年より現職。

text:Akifumi Oshita
photograph:Kunihiro Fukumori
hair & make:Aya Kajio