有名ブランドの希少モデルに出合えるのが、アニバーサリーモデルの楽しさ
一口にアニバーサリーといってもその内容はいくつかあり、代表的なものがブランド創業やモデル誕生から○周年というものだ。アニバーサリーをうたう理由は、表向きはブランドの歴史や先人たちへのオマージュといったところだが、実質はブランドの話題づくりの部分が大きい。
通常は10年単位、25年単位で行うことが多いものの近年は5年単位を節目とするブランドもあり、若干乱発気味な感は否めないが、それでもアニバーサリーならではの記念モデルはリミテッドエディションやその年限りのワンショットであることが多く、どのような特別感を打ち出してくるかという点は興味深い。
今年のSIHH一番のアニバーサリーが、IWCのブランド創業150周年だった。SIHH会場のブースは、ブランドが創業した1868年当時のアメリカ・ボストンのイメージからデザインされた。これはIWCを創業したフロレンタイン・アリオスト・ジョーンズがボストン出身の時計職人だったことに由来する。会期中のとある夜にはガラパーティーが催され、世界のVIPを含む800人以上のゲストがライブやパフォーマンスに酔いしれた。肝心の記念モデルはというとこれがまた素晴らしく、ブルーもしくはホワイトのラッカーダイヤルをあしらった限定の「ジュビリーコレクション」を披露。IWCの主要4コレクションから、3針、ムーンフェイズ、クロノグラフ、トゥールビヨンなど各種機構を搭載した全27型を取り揃え、質量ともに充実したコレクションでアニバーサリーを華やかに祝した。
ほかに今年のアニバーサリーを挙げると、モンブランは傘下のムーブメント工房であるミネルバの創業160周年となり、またボーム&メルシエはブランドの日本上陸50周年という節目を迎えた。いずれも、それぞれのアニバーサリーにちなんだ特別モデル発表している。
こうしたアニバーサリーモデルは通常のコレクションにラインアップされないことが多く、そのためブランドの埋もれがちな遺産を掘り起こしたモデルや、通常とは異なる手法で独自性を打ち出したユニークなモデルが多い。「お気に入りのブランドはあるが、人と一緒では物足りない……」と考える人にはアニバーサリーモデルは非常にお薦め。時計を通してブランドのストーリーを語れる点もまた、こうしたモデルならではの楽しみだ。
text:Hiroaki Mizuya(d・e・w)
photograph:Kazuteru Takahashi