シーマスター70周年
クルマにしろ、カメラにしても、いわゆる“モノマニア”の中には「クラシックデザイン好き」というタイプが案外多い。どれほどモダンなフォルムであっても、どれほど斬新なインパクトがあってもそれらには見向きもせず、やはり古き良き時代のデザインが好き、という類の愛好家だ。時計で言えば、小ぶりなケース、ボックス型やドーム型の風防、外縁がややくぼんだドーム型ダイヤル、それらを備えた2針もしくは3針のシンプルウォッチというところだろうか。
そんなクラシック好きにうってつけの新作が、オメガの「シーマスター 1948 マスター クロノメーター」である。オメガの「シーマスター」が初めて登場したのは1948年のこと。今年はそれから70年というアニバーサリーイヤーであり、その節目に発表された記念限定モデルである。
シーマスターと聞くと今では海やダイビングをイメージするかもしれないが、本格的なダイバーズウォッチが登場するのは1950年代のこと。それより10年ほど前に誕生したシーマスターは、日常生活を送るうえで水やホコリから時計を保護する防水時計として製造された。きっかけとなったのは、第二次世界大戦時にイギリス軍に納品した防水ケースの腕時計。過酷な環境下でも水に強く、高い精度を維持するオメガの腕時計が評価された。それを一般市民の生活にふさわしいデザインへと変えて製造されたのがシーマスターだった。その後、水に潜るための本格的な潜水時計(ダイバーズウォッチ)の開発を進め、1957年発表の「シーマスター 300」へとつながっていく。
初代モデルを忠実に再現した「シーマスター 1948」
今年の新作は、このシーマスターのファーストモデルを忠実に再現したデザインとなっている。インデックスのシェイプやダイヤル上の表記に多少の変更はあるものの、ケースやラグ、ダイヤルの形状はすべて踏襲。誕生当時と同じく2モデルが発表され、スモールセコンド付きモデルにはリーフ針とブラウンのストラップ、センター3針モデルにはドーフィン針とネイビーのストラップという組み合わせだ。
唯一、大きく変わった点が内部のムーブメントである。近年のオメガの新作の大半がそうであるように、この時計も「マスター クロノメーター」の認定を取得している。マスター クロノメーターとはオメガとスイス連邦計量・認定局(METAS)が協同で立ち上げた腕時計の品質保証制度のこと。その検査内容は、まずCOSC(スイス・クロノメーター検定協会)のテストを受けたムーブメントを1万5000ガウスの磁気にさらし、各種性能が常に作動するかをチェック。それをクリアしたものをケーシングした後に、再度1万5000ガウス以上の磁気にさらしてチェックし、さらにこの他に6つの厳しい検査を受けるというものだ。COSCの耐磁性基準が1500ガウスなので、じつにその10倍以上の耐磁性能を誇ることになる。ちなみに、医療用検査機器のMRI(磁気共鳴画像診断)が発する磁気がおよそ1万5000ガウスというから、マスター クロノメーター認定を取得した時計であれば、日常生活の中で磁気帯びによって不具合が生じるということはまずないと言っていい。
クラシックデザイン好きにとって、時計選びはなかなか難しいものがある。現代のデザイナーの手でつくられたクラシックテイストはどうも“キレイすぎる”感があるし、かといってアンティークウォッチは時計内部が確認できないことが多く、その後のメンテナンスの面でも不安を感じることだろう。であれば、こんな復刻モデルを選ぶのも一つの手段。70年続く歴史の始まりと現代最高峰の耐磁性能という、オメガの伝統と最先端が一度に楽しめる点もまた魅力だ。
このモデルにも注目!
シーマスターコレクションの中で、300m防水機能を備える「シーマスター ダイバー 300M」が今年誕生25周年を迎え、これを機にデザインをリニューアル。ケース径が1mm大きくなり、一度は消えていたダイヤルのウェーブパターンが復活した。下の写真はケース&ブレスレット素材にチタン、タンタリウム、オメガが開発した18Kセドナゴールドを使った限定モデル。マスター クロノメーター認定を取得している。
text:Hiroaki Mizuya(d・e・w)