Editor's Note
機械式高級時計ブランドの多くは年産数千~数万本という製造規模だが、オメガになるとその数は50万本を超える。それらすべての品質を保証するため、オメガの開発は“長期間、不具合なく安定して使用できる時計”へと向かってきた。その集大成として2015年にスイス連邦計量・認定局(METAS)と共に、「マスター クロノメーター」という精度・品質の新検査制度を創設。多数の検査項目のうち特記すべきは耐磁性の高さで、一般的なMRI(磁気共鳴診断装置)が作動する1万5000ガウスの磁力を受けても正常に作動するというもの。2016年以降に発表する時計の大半でこの認定を取得し、実用時計ブランドとしての地位を揺るぎないものにしている。
Brand History
スイス時計の世界的ブランドであるオメガが誕生したのは1848年。スイス時計産業の中心地であるジュラ山脈のラ・ショー・ド・フォンに、ルイ・ブランが時計の組み立て工房を創設したのが始まりだ。80年に現在本社があるビエンヌに工場を移設。94年に高性能ムーブメントを開発し、「究極」という意味を込めてギリシャ語のアルファベットで最後の文字となる「Ω(omega)」と命名。これを機にオメガ・ブランドが誕生した。
20世紀前半には、スイスの天文台が開催する精度コンクールで上位の常連となり、また1932年のロサンゼルス大会以降オリンピックのオフィシャルタイムキーパーを最多回数担当するなど、「精密時計のオメガ」という名声を獲得。天文台コンクールでの優秀な成績を象徴した「コンステレーション」や画期的な防水設計の「シーマスター」などを1950年代半ばまでに立て続けに発表した。
その名声を不動のものにしたのが、ムーンウォッチの愛称で親しまれる「スピードマスター」である。NASA(アメリカ航空宇宙局)が複数の時計メーカーを対象に行ったテストを唯一パスしたスピードマスターは、1965年にNASAに公式採用され、人類初の月面着陸をはじめ数々の有人宇宙ミッションに携行された。
1983年、SMHグループ(現スウォッチ グループ)を結成。99年に時計の心臓部である脱進機への注油の手間を軽減するコーアクシャル脱進機を発表すると、その後、耐磁性にも優れたマスター コーアクシャル キャリバーへと発展し、メンテナンスフリーの実現へと邁進中。実用時計のトップランナーとして走り続けている。