アウターベゼルとインナーベゼル、どう違う?

海に潜るダイバー向けのツールとしてつくられたダイバーズウォッチ。その最大の役割は、潜水開始から何分経過したかをダイバーに正確に伝えることにある。経過時間がわかれば、タンクの圧縮空気の分量からあと何分くらい潜っていられるか、ダイバー自身が容易に計算できることになる。

潜水開始からの時間を明確に伝えるため、かつての時計師たちが考案したのが回転式のアウターベゼルである。ベゼルに大ぶりな分目盛りを設け、それを回転させて分針と連動させることで経過時間を伝える仕組みだ。さらにそのベゼルを反時計回りにしか回転しないシステム(逆回転防止)にすることで、たとえ潜水中に不意にベゼルが回転してしまったとしても、潜水開始からの経過時間が実際よりも長くなったように見えるのみ。実際の経過時間よりも短く見える方向には回転しないため、命の危険もないという理論である。

ただし、このアウターベゼルはむき出しのため傷つきやすく腐食しやすいという弱点がある。使い続けるうちに分目盛りが見えにくくなることもある。そこで新たに開発されたのが、インナーベゼルという機構である。これは回転式ベゼルを時計の風防の内側に納め、ベゼルの調整はケース側面のリュウズで行うというもの。ベゼルが風防に覆われているため傷や腐食には強い。だが一方で、ベゼルのセッティングをリュウズで行うため、グローブなどを着けていると操作性に難がある。このようにアウターベゼルとインナーベゼルはそれぞれに一長一短があり、甲乙つけがたい、というのが長らく時計関係者の見解だった。

アクアタイマーのベゼルは“いいとこ取り”

このダイバーズウォッチのベゼル問題に一つの解決策を与えたのがIWCだ。2014年発表の「アクアタイマー」に採用された「回転式アウター/インナーベゼル」がそれである。

「アクアタイマー・オートマティック」。ステンレススティールケース。ケース径42mm。自動巻き。ラバー・ストラップ。30気圧防水。パワーリザーブ42時間。58万円(税別)

これは端的に言えば、アウターベゼルとインナーベゼルの“いいとこ取り”で、アウターベゼルを回すと、風防内に設置された分目盛り付きインナーベゼルが回転するというもの。アウターベゼルは両方向に回せるが、反時計回転の時だけインナーベゼルが連動し、時計回転の際は空回りする仕組みだ。経過時間を正しく表示する信頼性に加え、操作性や視認性、耐傷性、耐腐食性のいずれにも優れたベゼルシステムとなっている。普通のダイバーズウォッチでは物足りないメカ好き・ギミック好きにもお勧めできるユニークな機構である。

TPOに合わせてストラップの付け替えも可能

(左)分針と0(三角マーカー)・5・10・15分のインデックスには蓄光塗料のスーパールミノヴァを塗布。(右)ストラップの着脱はラグ間にある突起を押して行う

さらに、このアクアタイマーの大きな魅力がもう一つ。ストラップ/ブレスレットが容易に付け替えられるシステムが採用されている。IWCが特許を取得したこのシステムにより、たとえばマリンスポーツを楽しむ時や、オフタイムのスポーティーなスタイルにはラバー・ストラップを合わせて、オンタイムの品格ある装いでは別売りのブレスレットに付け替えて、など、服装やシーンに合わせて使い分けることができる。

実用本位でありながら、使い勝手の高さも光る。IWCのアクアタイマーは、そんな懐の深いダイバーズウォッチである。

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