実は珍しいトゥールビヨン搭載ダイバーズ
ダイバーズウォッチは、もともと潜水用時計として考案された頑強な高機能スポーツウォッチである。一方、重力によって生じる姿勢差を解消して高精度を実現する、極めて繊細な複雑機構のトゥールビヨンや、機械式時計の駆動メカニズムが透けて見える、これまた繊細なスケルトンは、一般人の発想ではまずダイバーズウォッチとは結び付かないだろう。そんな「あり得ない」を実現して、周囲を驚かせたのがアンジェラスだ。
アンジェラスは19世紀末に創業し、2014年に復興したスイスの時計ブランド。特に現代の先端技術を駆使したオリジナル設計のムーブメントに特色があり、機能もデザインも独創的な機械式複雑時計が時計通の間で注目を浴びる存在だ。2018年最新作「U50 ダイバー トゥールビヨン」は、そんなブランドの個性が全開になったダイバーズウォッチである。
本格スペックでありながら破格の300万円台
ブランド初のダイバーズウォッチは、特色が満載だ。ケースは軽量で耐性に富むチタンでつくられ、300mの防水を確保。逆回転防止ベゼルは、ケース内に収納して外部との接触を避けるインナー式。そして、トゥールビヨン搭載の初ダイバーズである。アンジェラスは、特殊なフレーム構造によってムーブメント全体を限りなく透けて見えるようにするのと同時に耐久性を確保。さらにその心臓部にトゥールビヨン機構を組み入れるという離れ業を成し遂げたわけだ。しかもダイバーズウォッチ規格の要件にあるヘリウム排出バルブも抜かりなく備えるという本格仕様で、実際にダイビングに使えるのだからすごい。
トゥールビヨン搭載モデルとなると、普通なら1000万円超えが常識だが、「U50 ダイバー トゥールビヨン」はこれだけのスペックをそろえて税別300万円台後半という破格のプライス。もしこの時計のオーナーになったら、その際立った高機能とスケルトン構造、合わせて色使いにも凝った美観を周囲に自慢したくなるはずだ。ダイバーズウォッチの個性派の中の個性派。これほどユニークな個性の持ち主は、そうはない。
text:d・e・w
photograph:Kazuteru Takahashi(top image)