クロノグラフというとスポーティーなデザインが多い中、ディテールに上質感が行き渡り、クラシカルな表情を醸すモデルがある。その一つ、スイスのウォッチメーカー、ロンジンによる「ロンジン マスターコレクション」(Ref.L2.629.4.78.3)を紹介しよう。

この時計に刺激を受けるのは、こんな男だ!


・ビジネスの装いで控えめな品格を重んじる人
・隠れた名品を知る「通」でありたい人
・価格以上の価値を求めたい人

このモデルは、控え目で大人の雰囲気にあふれ、ビジネスシーンにも最適である。高品質の機械式ムーブメントと近づきやすい価格を両立させたところも魅力的で、普段使いのクロノグラフを1本手に入れるなら、有力な選択肢になり得るだろう。

3時と9時位置にカウンターを配する2つ目のレイアウトはクラシッククロノの定番スタイル

クロノグラフの名門とされるスイスの時計ブランドがいくつかある中で、ロンジンは間違いなくその一つである。1832年創業の老舗ロンジンは、懐中時計の時代からクロノグラフの製作で名を馳せ、その優れた技術を継承する腕時計には、歴史的な名作も少なくない。

ロンジンは1913年に初の腕時計クロノグラフ用のムーブメントを開発したことで知られる、この分野ではパイオニア的な存在。1936年に開発された「キャリバーL13ZN」という手巻きクロノグラフ・ムーブメントはとりわけ名高く、アンティークウォッチの愛好家や専門家が高い評価を与える傑作だ。特色は、クロノグラフの作動中に、1回のボタン操作(ワンプッシュ)でリセットと再スタートが瞬時に行える特許取得のフライバック機能。現在も数少ない高度な機能である。

L13ZNからは、クロノグラフ秒針と同軸のセンター針による60分積算計を配備するまた別の傑作ムーブメント(写真右)も誕生した。写真左は同ムーブメントを搭載する1946年製モデル

現在のロンジンは、大量のミュージアム・ピースに象徴されるように、自社の豊富な遺産を背景に、伝統を重んじる熟成されたスタイルのモデルに力を入れているが、その端的な例が2005年にスタートした冒頭のマスターコレクションである。今回取り上げたこのロングセラー・モデルは、現代の自動巻きムーブメントを搭載する点を除けば、L13ZNを搭載していたかつてのクロノグラフの雰囲気を伝えるタイムレスなデザインに特徴があり、その歴史も含めて味わい深いものがある。

働く男を刺激するクロノグラフ#3
ロンジン「ロンジン マスターコレクション」(Ref.L2.629.4.78.3)

ステンレススティールケース。ケース径40mm。3気圧防水。アリゲーター・ストラップ。31万8000円(税別、ブレスレットモデルも同一)

1930年代から40年代にかけてのロンジンの代表的なクロノグラフのスタイルを文字盤のデザインに取り入れ、クラシカルなエレガンスを醸す。ギヨシェ彫り模様にアラビア数字を配し、ブルーのスティール針を配した文字盤は、3時位置にスモールセコンド、9時位置に30分積算計を置く。

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