経過時間が測定できるストップウォッチ機能が付いたクロノグラフ腕時計は、いつの時代も一定の人気がある。プッシュボタンを備えたケースや、複数のカウンターが並ぶダイヤルは見た目にスポーティーで、アクティブなスタイルを好む男たちから支持を得ている。
また、数ある腕時計の機能の中で、ユーザーが自ら操作できる唯一の機能であることも大きい。クロノグラフ針のスタート/ストップ、リセットといった一連の操作は、機械を手ずから操っている楽しさがある。仕事の移動や休憩中に、ほとんど必要もないのに遊び半分で使ったことがある人も少なくないだろう。
さて、そのクロノグラフにも近年はいくつかの傾向が見られる。その一つがクラシックテイストだ。その多くは20世紀半ばに製造されたモデルに着想を得たもので、丸形ケースにすっきりとしたベゼルとプッシュボタンを備え、ダイヤルには2つのカウンターを左右対称に配置、というのがデザイン面の特徴である。
数年前より、ファッションの世界では古典回帰の潮流が見られてきたが、それが腕時計デザインにも影響を与えたものと見られる。ほど良いクラシックテイストは今風の感性の証左。古典ベースのデザインは将来的にも廃れることが少なく、長年にわたり使用できる点もお薦めする理由である。
■時代の空気を巧みにとらえたヴィンテージ感
ブライトリング「プレミエ B01 クロノグラフ 42 ノートン」
一昨年、リブランディングを敢行したブライトリング。それまでは航空業界向けのクロノグラフを主軸としてきたが、今後は陸・海・空すべてのフィールドをテーマとした腕時計を取りそろえる方向へと舵を切った。陸の分野での今年の話題作が、イギリスのモーターサイクルメーカー、ノートンとのパートナーシップを記念したこのモデル。ブラックダイヤルと鮮やかな対比を成す2つのインダイヤル、ゴールドで縁取りされたアラビア数字、使い込んだような味わいのあるレザー・ストラップなどが、上質なヴィンテージテイストを醸す。ムーブメントは自社開発・製造のキャリバー01。COSC認定クロノメーター。
■往年の正統派クロノを現代向けにアップデート
カール F. ブヘラ「ヘリテージ バイコンパックス アニュアル」
カール F. ブヘラのルーツであるブヘラは、ヨーロッパを中心に展開する高級時計宝飾店だが、20世紀初頭からオリジナルウォッチの製造も行っていた。同社が1956年に製造したクロノグラフをベースとしたのが新しい「ヘリテージ」ラインである。オーセンティックなケースフォルムやバイコンパックス(2つのサブダイヤル)を左右対称に置いたレイアウトは踏襲しながら、手巻きムーブメントを自動巻きに、ケース径を41mmにアップサイズして、さらに大型日付表示と月表示を加えるなど、実用的なアップデートが図られた。ローズシャンパンカラーのダイヤルがどこか懐かしいエレガンスを放つ。
■使い込むほどにヴィンテージ感が増す
モンブラン「モンブラン 1858 オートマティック クロノグラフ リミテッドエディション 1858」
2017年に誕生した「モンブラン 1858」は、山岳探検の世界からインスピレーションを受けたコレクション。現在はモンブランの傘下にあるミネルバが、1920年代から30年代にかけて軍隊や探検隊のために考案した時計に着想を得た新作を発表している。今年はこのコレクションに、経年変化が楽しめるブロンズ製ケースとカーキグリーンのダイヤルを組み合わせたモデルが3型登場。写真の自動巻きクロノグラフは、プッシャーのデザインや2つ目のダイヤルがブロンズ特有の渋いゴールドカラーと相まって、独特のクラシックテイストを生み出している。フランスの織産専門工房が織り上げたストラップは、強靭で着用感も心地よい。
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