クロノグラフのデザインは見ていて飽きることがない。ベゼルやプッシュボタン、あるいはダイヤル上のカウンターやインデックスの意匠次第で、スポーティーにもエレガントにも、またクラシックにも未来的にも変化する幅の広さがあるからだ。
この連載の第3回では、近年のクロノグラフの傾向としてクラシックテイストを取り上げたが、それとは対象的に未来を志向するデザインももちろんある。先進性や前衛性を打ち出すブランドを中心に毎年のように新しい趣向を凝らしたデザインが登場する。以下に取り上げたブランドでいえば、ウブロやクストスなどはそうした類のブランドだ。一方でスイス高級時計の伝統を重んじるパルミジャーニ・フルリエのようなブランドが手がけると、前衛的ではあるもののそれほど過剰に主張することなく、控えめで落ち着いた印象になっているのも興味深い。
同じスポーツウォッチのカテゴリーに分類されるダイバーズウォッチやパイロットウォッチは、その大半がタフでパワフルなデザインが占めるが、クロノグラフのスタイルはまさに各社各様。クロノグラフのデザインを見ればそのブランドの美意識が分かるといっても過言ではない。先進性やイノベーションに目がない個性を演出したいなら、こんな前衛的なクロノグラフが格好だ。
■フェラーリチームがデザインを手がけた最先端クロノ
ウブロ「クラシック・フュージョン フェラーリGT 3Dカーボン」
2011年にフェラーリとパートナーシップを結んで以来、ウブロは毎年何らかの“フェラーリモデル”を発表している。今年はウブロの中で最もシンプルな「クラシック・フュージョン」から全く新しいデザインが誕生。自社製クロノグラフムーブメントのウニコをインナーケースで固定し、さらにそれをアウターケースで支えるような二重構造を時計の表面に顕した点が斬新だ。この大胆な発想はフェラーリのデザインチームとのコラボから生まれたもので、腕時計の基本形である丸形でありながらグランツーリスモというフェラーリらしい世界観を見事に体現した。さらにこのモデルはケース素材に3Dカーボンという先端素材を採用。クルマ時計の新地平を切り開くようなカッコよさだ。
■悪目立ちすることのない大人のアクティブネス
パルミジャーニ・フルリエ「カルパグラフ クロノメーター チタン」
昨年、パルミジャーニ・フルリエは自社開発・製造のトノー形クロノグラフムーブメントを発表した。これはコラムホイールと垂直クラッチを採用したことと、クロノグラフモジュールを積み上げるのではなく、最初からベースムーブメントに組み込んだ一体型という点が秀逸だった。これにより耐久性や安定性が向上し、なおかつ毎時3万6000振動のハイビートにより精度面でも優れるキャリバーとなった。今年はこのキャリバーをチタニウムケースに載せた新作を発表。2層のダイヤルにオープンワークを施してモダンでスポーティーなテイストを新しく打ち出した。COSC認証を取得し、信頼性を重視する点は変わることがない。
■優雅なクルージングにはこんな時計がよく似合う
クストス「チャレンジ シーライナー クロノ ポルトフィーノ」
プライベートジェットやヨットなど、ラグジュアリーな乗り物の世界をテーマに時計づくりを進めるクストス。今年はヨットの世界観を体現する「シーライナー」から新作2モデルを発表した。ここで取り上げたのはイタリアンリヴィエラのリゾート地、ポルトフィーノヨットクラブとのコラボレーションによる限定モデル。ダイヤルの一部、ブラウンカラーの部分はチーク素材を使用し、ケースにはブルーPVD加工を施した。ブルー、ホワイト、ブラウンの組み合わせは優雅なクルージングを思わせ、まさしく夏の海にぴったりなクロノグラフとなっている。
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