今、ダイバーズウォッチがクロノグラフ人気の後を追うようにしてトレンドになっている。クロノグラフが主に車の世界からインスパイアされたアクティブさを特徴とするなら、ダイバーズウォッチはもちろん海の世界。深海での作業にも耐えうるタフネスが求められる。
厳密に言うと、ダイバーズウォッチと称するにはJISやISOで定められた細かな規定がある。主な規定には100mの潜水に耐える防水性能を有していること、時間を管理するシステム(逆回転防止ベゼルなど)を備えること、1.25倍の水圧に耐える耐圧性を有することがあり、さらに子細に述べれば、視認性、耐磁性、耐衝撃性、耐水中浸漬性(ガラスの曇り)……といった基準をクリアしなければならない。ヘリウムガスを使って潜る飽和潜水用の潜水時計はまた別の規定がある。
このように機能時計から始まったダイバーズが、近年は個性を表現するためのアイテムとして人気だ。これまでも海好きからは絶大な支持を得ていたが、ここ数年はデザインの多様化が進み、高級感やエレガンスを打ち出したものや控えめな小径サイズ、シースルーバックを採用したスケルトンタイプ、さらに角形ケースのダイバーズなども登場して選択肢が大幅に広がった。ここでは、本格派のスペックを備えた新作3モデルを厳選する。
■先端のマテリアルで一段とタフに進化
パネライ「サブマーシブル BMGテック™ 47mm」
今年のパネライは、プロフェッショナル・ダイバーズの「サブマーシブル」コレクションに絞って新作を発表した。フリーダイビング世界王者のギョーム・ネリーとのダイビングやイタリア海軍特殊部隊のトレーニングなど、特別な体験がセットになった限定版が話題となったが、ダイバーズウォッチの進化という点での注目がこのモデルだ。ケースにはジルコニウム、アルミニウム、チタニウム、ニッケルから成る液体金属のBMGテック™を、単方向回転式のベゼルにはカーボンファイバーをベースに独自開発したカーボテックを使用。これらの先端的な素材で耐衝撃性、耐腐食性などが高められた。
■ダイバーズでスケルトン、さらに5日間持続!
アンジェラス「U51 ダイバートゥールビヨン」
昨年、アンジェラスが発表したダイバーズウォッチは大きな反響を呼んだ。内部にスケルトンのトゥールビヨンムーブメントを搭載し、ケースバックをシースルー仕様にしながら300mの防水性能を確保した点が驚嘆もので、さらに300万円台という価格もサプライズだった。その後継機となる今年の新作ではパワーリザーブを55時間から5日間に伸ばすという進化を披露。主ぜんまい自体の大型化に加え、脱進機にシリコン製パーツを採用し、トゥールビヨンの軸受け部品をボールベアリングに変更するなどで5日間という長時間駆動が実現したという。合わせてインナーベゼルの一部や分目盛りのカラーがオレンジへと刷新された。
■北極圏探検に携行された名作がよみがえる
セイコー「セイコー プロスペックス ダイバースキューバ 1970 メカニカルダイバーズ 復刻デザイン」
1965年に国産初のダイバーズウォッチを製造し、国内のみならず国際的な潜水用時計の規格にも影響を与えたセイコーは、数年前から過去のダイバーズの復刻を手がけている。今年はやや楕円形のケースを特徴とする1970年製のモデルを復刻。オリジナルは冒険家の植村直己が、北極圏1万2000kmを犬ぞりで旅した際に着用したモデルで、時計ファンの間でも人気が高い。デザインはオリジナルをほぼ忠実に再現しつつ、内部のムーブメントや風防の素材、ストラップをアップデートし、防水性能も150mから200mへと高めてある。特徴的なケースにはザラツ研磨や独自の表面加工を施して、美観と耐久性を両立させている。
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