「ツァイトヴェルク・デイト」
──A.ランゲ&ゾーネ
精緻、かつ端正――
ドレスデンのオペラハウス、「ゼンパーオーパー」のホール正面上段には有名な“5分時計”が設置されている。ローマ数字とアラビア数字で時・分をデジタル式に表示し、分は5分刻みに瞬転する。オペラ上演中の暗がりの中でも時刻が読めるように視認性を重視してこのユニークな時計は生まれた。製作したのはA.ランゲ&ゾーネの創始者フェルディナント・アドルフ・ランゲとその師匠。ランゲの視認性へのこだわりはここにルーツがあるといっていい。すなわちランゲのアイコンである「ランゲ1」の瞬転式アウトサイズデイトしかり、「ツァイトヴェルク」の瞬転数字式時・分表示しかり、意匠とともに視認性重視があった。
ランゲ“らしさ”はゼンパーオーパーの5分時計に始まる
瞬転式は瞬間的に大きな力が働くから動力のコントロールが難しい。特に毎正時に時・分3枚のディスクを瞬時に動かすツァイトヴェルクは動力制御メカニズムの高度な技術が必要になってくる。さらに今年デビュー10周年を迎えたツァイトヴェルクの新作、「ツァイトヴェルク・デイト」はダイヤル外周で日付を表示する。ディスクがもう1枚増え、日にちが変わる瞬間に4枚のディスクが動作する。端正な顔の裏側に卓越した技術が隠れている
「Zeitwerk Date」
A.ランゲ&ゾーネのオリジンともいうべきゼンパーオーパーの5分時計を腕時計として表現したのが、機械式時計でありながら、画期的な瞬転式デジタル表示という機構を持つ斬新な「ツァイトヴェルク」だった。デビュー10周年の新作はデイト表示を加えた。ダイヤル外周の日付リングに赤く表示される数字が日にちを表す。これも瞬転式。深夜0時に瞬間的に前に進む。8時位置のボタンは日付表示修正用、4時位置には日付表示機構と切り離して、即座に時表示だけを修正するボタンが追加された。操作性が十分に考慮されている。
text:d・e・w
photograph:Kazuteru Takahashi