今年も気が付けば年の瀬である。間断なく仕事が舞い込むビジネスパーソンにとって、一年の終わりは自身のパフォーマンスを振り返るいい節目だろう。仕事や家庭を顧みてこの一年の自分に及第点をあげられるようなら、自分をいたわるようなほうびを手にしてもいい。何しろ、働き方も生活も前例がないほどイレギュラーだった一年である。それを乗り越えた自分をいたずらに卑下する必要はない。
自分へのほうびであるから、誰はばかることなく自分の「欲しい!」にわがままに選べばいい。しかしながら、昨年、今年とこれほど家族のことを思った年はないだろう。であれば、例えばこの一年の奮闘を記憶するとともに、ゆくゆくは息子に残せるものを選ぶというのも気が利いているではないか。親子のストーリーが生まれるし、何より“自分たち”へのほうびとすれば購入のいい言い訳にもなりそうだ。
スイスの老舗ウォッチブランド、オーデマ ピゲの腕時計はまさにそんなほうびにふさわしい逸品である。ブランドの創業は1875年。スイス時計製造の聖地であるジュウ渓谷のル・ブラッシュという山村に、ジュール=ルイ・オーデマとエドワール=オーギュスト・ピゲという二人の時計師が立ち上げた工房をルーツとする。それから現在までの140年以上もの間、創業者一族での家族経営を貫いてきた。
ファミリービジネスの利点は資本に左右されずにロングタームで事業を計画できることにある。時計づくりの方向性が突然がらりと変わることがなければ、質を落として量を求めるようなむやみな増産もない(それ故に入手困難になりがちなのが歯がゆいが)。数年後、十数年後に息子に譲り渡すことになっても、ブランドのイメージや価値が大きく落ちていることはまずないと言っていい。後代に「伝えたい逸品」として推奨する一番の理由である。
さて、今回取り上げたのは「ロイヤル オーク オフショア クロノグラフ」のニューモデルだ。約70時間のパワーリザーブを有する最新の一体型フライバッククロノグラフ・ムーブメントを搭載し、工具なしでストラップの付け替えが可能なシステムも備わる。主に使い勝手の面がブラッシュアップされたが、やはり一番の特徴は八角形の大胆なベゼルや大型のプッシュボタンが織りなす力強いデザインにある。この一年の奮闘をたたえるにふさわしいインパクトがあり、また息子に譲り渡す際には「タフに生き抜けよ」なんていうメッセージを代弁してくれそうでもある。本物の酒の味を教えるように、奥深い高級機械式時計の世界を伝える日が来るのが楽しみになる。
PRESIDENT 11月26日発売号「伝えたい逸品」特別広告企画掲載
ニット4万4000円〈ザノーネ/阪急メンズ大阪06‐6361‐1381〉 シャツ4万1800円〈グランシャツ/コロネット03‐5216‐6521〉 眼鏡20万9000円〈マスナガ シンス 1905/コンティニュエ03‐3792‐8978〉(全て税込)
text:d・e・w
photograph:Masahiro Okamura
styling:Takuro Tsuchida