こんな優しげなダイバーズがあっただろうか
ボリューミーなケースは確かな存在感があり、視認性を重視したデザインは端正で潔い。潜水向けの意匠がシンプルかつパワフルな個性となり、ダイバーズウォッチはもはやファッションツールの1つとして認知されつつある。近年はビジネスシーンで目にすることも多くなった。
とはいえ、もとはスポーツウォッチである。TPOはわきまえる必要があるし、着用するにしてもデザインを選ぶ必要があるだろう。近年はオン・タイムにも着用しやすいダイバーズウォッチが増加傾向にあるが、それらの中でも出色なのがオメガの「シーマスター プラネットオーシャン」の新作である。
防水性に長けたオメガの「シーマスター」コレクションの中で、海洋保全活動など“海との関わり”をテーマとするのが「プラネットオーシャン」である。その特徴を端的に述べると、600m防水をはじめとするダイバーズウォッチの本格スペックと、都会的に洗練されたデザインの両立にある。そのプラネットオーシャンから今春登場したのがこの3モデルとなる。
これら3モデルの魅力は、一見して明らかなように、その色みである。ダイバーズウォッチは実用時計の中でも特にタフさが求められるため、力強さやパワフルさをたたえたデザインが多く、また色の面でも視認性の観点から鮮明なカラーを用いるのが定石だった。オメガのプラネットオーシャンもその例に漏れず、これまではブラックやホワイト、ブルー、オレンジといった明瞭な色を備えたモデルが多く見られていた。
そこに登場したのが、その定石を覆すかのような優しげなニュアンスカラーをまとったこの3モデルである。カラーの着想源は“シティ”“砂漠”“ジャングル”で、それぞれグレー系、ベージュ系、グリーン系の色みがあしらわれた。600m防水を確保したケースは43.5mm径、16.16mm厚とややボリュームがあるが、これらのニュアンスカラーがその存在感を程よく緩和。ジャケットなどと合わせて着装した際も手元だけが浮いて見えることのない、柔和な印象に仕上がっている。
一方、性能面はオメガが誇る本格ダイバーズのコレクションだけあって、申し分ない。いずれのモデルもCOSCによるクロノメーター認定に加えて、さらに優れた耐磁性などを証しするMETAS(スイス連邦計量・認定局)によるマスター クロノメーター認定を取得。カラーベゼルにはセラミックを用いて耐傷性を高めるなど、細部の改良にも余念がない。
オメガは古くから時計の性能向上に注力してきたブランドであり、ダイバーズウォッチの進化においても重要な役割を果たしてきた。そうした実績があるが故に、機能重視、性能本位のブランドだと思いがちだが、今年のプラネットオーシャンはその認識までも変え得る。新作を目にして抱くのは、本格的な性能を有した時計をデイリーにおしゃれに楽しみたいという、現代のライフスタイルに合致したブランドという印象だ。表現の幅を現代的な方向へと広げるオメガから、ますます目が離せなくなってきた。
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