“航海”がテーマの時計にダイヤモンドが似合うわけ
この数年、男のジュエリーウォッチが面白い。従来は宝飾品を本業とするジュエラーの独擅場のようなジャンルだったが、昨今は時計専業のウォッチメーカーも男性向けのジュエリーウォッチを製作する。その流れはこの数年で一段と加速した感があり、従来はあまり見られなかったスポーティーなデザインのジュエリーウォッチも発表されている。それらの時計はスポーティーとリュクスという対極にありそうな要素を融合したテイストが新鮮で、ドレッシーなジュエリーウォッチに比べて普段遣いしやすい点でも魅力的だ。
今回取り上げるブレゲの「マリーン」コレクションの新作は、まさにそうした類の時計である。マリーンは、18世紀にフランスの王国海軍時計師として仕え、マリンクロノメーター(航海用精密時計)の発展に大きく寄与したブレゲ創業者のアブラアン‐ルイ・ブレゲの功績に由来するコレクションである。現代のブレゲは“航海”から着想を得てウォッチデザインを手掛け、1990年にコレクションとしてローンチすると、同じく航海に関連するワールドタイムや均時差表示、トゥールビヨンなどの機能を載せたモデルを発表してきた。
そこに新しく加わったのが、この「マリーン クロノグラフ 5529」である。航海とダイヤモンドという異色の組み合わせだが、マリーンのデザイン的な特徴であるウェーブパターンを施したダイヤルをディープネイビーで彩り、そこにたゆたうように8個のバゲットカットダイヤモンドと4つのローマ数字をセット。さらにベゼルには90個のバゲットカットダイヤモンドを敷き詰めた。
航海なのにダイヤモンド……? という一抹の疑問は、もはやない。ダイヤモンドの輝きはさながら船舶のデッキから眺める海面のきらめきのようであり、遠方に望む氷河のようにも見えてくる。ディープネイビーの色合わせやダイヤルパターンなどの意匠が、スポーティーなデザインとリュクスなダイヤモンドを見事に調和させた。
ケースの内部には、クロノグラフの作動中にストップ、リセット、リスタートがワンプッシュで行えるフライバッククロノグラフを備えた自動巻きムーブメントを搭載する。脱進機は高精度が見込めるインバーテッド・レバー式を採用し、ひげぜんまいとホーンにトルクの伝達効率を高めるシリコン素材を使用している点も、ムーブメント性能に定評があるブレゲらしい。
この数年で、男のジュエリーウォッチの選択肢が多彩になったのは間違いないが、海とダイヤモンドをこれほどまで自然につないだモデルは非常にまれだ。海辺のリゾートやクルージングで、街中のレストランやコンサート、さらには夏の夜のソワレのシーンで……と、大いに重宝しそうなジュエリーウォッチである。
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