Editor's Note

創始者アブラアン-ルイ・ブレゲは機械式時計の機構の4分の3を発明したといわれる時計史上の偉人であることから、現代のブレゲも発明精神をブランドのDNAとする。2000年代、技術開発力に長けた一部のトップブランドはムーブメントのオイルフリー化を求めてシリコン素材の開発とそれを採用した脱進機の製造に乗り出すが、そのリーディングブランドがブレゲだった。さらに、ムーブメントにとっては不具合を起こす大敵とされていた磁力を用いて歯車の軸と受け石の摩擦をなくすマグネティック・ピボットを発明するなど、機構開発が成熟しつつある現代にあってもイノベーションの可能性を追求するブランドである。

創業年
1775年
創業地
フランス パリ
拠点
スイス ラベイー(ジュウ渓谷)

Brand History

1775年、アブラアン-ルイ・ブレゲがパリのシテ島に工房を設立する。彼は時計の歴史を2世紀早めた時計師といわれ、世界初の自動巻き機構をはじめミニッツリピーター、クロノグラフ、パーペプチュアルカレンダー、トゥールビヨン、さらにパラシュート衝撃吸収装置やツインバレルなど、現在機械式時計に使用されている機構の多くを発明した。フランス王室や貴族たちは瞬く間にブレゲがつくる時計の虜になり、ルイ16世王妃マリー・アントワネットが「世界最高の時計を」というオーダーを残してフランス革命中に断頭台の露と消えたというエピソードも有名である。なお、その時計の製作はブレゲの弟子たちが受け継ぎ1827年に完成。一時行方が不明だったが2007年に発見され、現在は「No.160」としてエルサレムの博物館に所蔵されている。ブレゲ社は行方不明中に記録を頼りにレプリカ「No.1160」を製作し、ブレゲ社にて保管している。アブラアン-ルイ・ブレゲの死後は、彼の子孫たちが時計事業を継承するが、1870年に工場長だったブラウン家に売却される。1950年代にはフランス海軍航空部隊のためにパイロットウォッチ「タイプXX」を製造するなど歴史を受け継いだものの、その後事業は1970年にパリで宝飾細工商を営んでいたショーメ兄弟の手に渡り、さらに87年には投資会社インベストコープへと売却される。
資本に翻弄されていたブレゲを救ったのが、スウォッチ・グループの創設者にして総帥だったニコラス G. ハイエック。彼は1999年にブレゲを買収すると自らブランドCEOに就き、アブラアン-ルイ・ブレゲが手がけた複雑懐中時計の再現に取り組むほか、シリコン素材の採用や磁力を応用した調速機構といった先進的な開発にもいち早く着手。時計の外観はかつての懐中時計を踏襲した古典的なデザインでありながら、内部機構は最先端という時計づくりを進めている。