歴史、デザイン、エピソードの全てがユニーク

体感的には、昨今発表される機械式時計の9割は丸形ケースを備えたモデルである。理由はいくつかある。機械式時計は円運動をベースにしているため視認性などの観点から丸形のほうが適していること、ケースの気密性を高めやすいこと、そしてシンプルに丸形を選ぶユーザーの方が多いためだ。5つも6つもコレクションを持ちながら、その全てが丸形ケースというブランドも少なくない。

だからこそ、スクエアやレクタンギュラー(長方形)のケースを備えたモデルには独特の個性が感じられる。端的に言えば、直線的なフォルムが織り成す端正さであり、ケースとストラップが自然につながる一体感である。その角形時計を代表するモデルとして長年親しまれているのが「タグ・ホイヤー モナコ」。今春発表されたその最新作が、ダークブルーのカラーをまとった「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」である。

時計
角形ケースにクロノグラフムーブメントを内包する「タグ・ホイヤー モナコ クロノグラフ」。ブラックとダークブルーを基調としたデザインの中に指針のイエローが映える。チタンケース(ブラックDLC加工)。ケースサイズ39×39mm。自動巻き。100m防水。カーフ×ラバーストラップ。141万3500円(税込)
時計文字盤
ダイヤルはデザインの特徴であるスクエア形のカウンターやロゴを生かしてオープンワークを施した。パーツにも極力ブラック加工を施し、一体感を向上させたムーブメントが時計の表面からも眺められる
時計裏面
ケースバックはシースルー仕様。ローターをブラックに、クロノグラフ機構のコラムホイールをイエローに彩った自動巻きのキャリバーTH20‐00がのぞく。約80時間という長めのパワーリザーブも特記事項
時計文字盤の夜光塗料
時分針やアワーマーカーにはブルーに発光する蓄光塗料を塗布。暗闇では一段とフューチャリスティックな表情を見せ、何とも格好いい

角形時計のデザインは、クラシックな気品をたたえたものか、もしくはケースの角や数字書体などをアレンジして軽妙に仕上げたものが大半を占める。その中にあって際立つのがタグ・ホイヤー モナコのオリジナリティーである。

今から55年前の1969年に、角形時計としては世界初の30m防水を備えたスポーツウォッチとして誕生し、なおかつ自動巻きクロノグラフをいち早く搭載するなど、歴史が物語るマインドはイノベーティブで先進的。それと呼応するかのようにウォッチデザインもアバンギャルドな印象に仕上げられ、精悍かつ前衛的という無類のオリジナリティーを確立しているのである。このタグ・ホイヤー モナコには、かつて名作映画『栄光のル・マン』でスティーブ・マックイーンが着用し、その後多くのカーレーサーたちに親しまれたというエピソードが付き物だが、誰よりも速く、誰よりも先にゴールしたいと切望する彼らの心をつかんだのもうなずける話である。

往年のカーレーサーのメンタリティーを現代のビジネスパーソンに置き換えるなら、より良い成果を目指す、より高い志を持つ、ということになるだろうか。ビジネススタイルの自由度が高まった今、カジュアルダウンした服装が許されるシーンにはこんな時計を合わせるもいい。軽快なフットワークやアクティブなマインド、そして向上心を手元で発する格好のツールになる。

お問い合わせ

LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
TEL:03‐5635‐7054


photograph:TAG Heuer
edit & text:d・e・w