Editor's Note
もともとスポーティーで勢いを感じさせるブランドイメージが、近年さらに加速した感がある。以前から世界の一流アスリートやF1レーサーをアンバサダーとして迎えていたが、最近ではヨーロッパ各国のサッカーリーグや日本のJリーグの公式タイムキーパーに。新作発表には常に色や素材のバリエーションに富んだ大ボリュームで挑み、アンバサダーの特別モデルや100万円台のトゥールビヨンなどで話題をさらった。さらに、グーグルとインテルとのコラボでコネクテッドウォッチの分野にもいち早く進出した。その原動力が、時計界の重鎮でLVMHグループ ウォッチ部門 プレジデント兼タグ・ホイヤーCEOのジャン-クロード・ビバーだ。前述の“仕掛け”の大半は、数々の時計ブランドで培った体験を基にしており、今後どのような手腕を見せるのか注目が集まる。
Brand History
タグ・ホイヤーの歴史は、1860年に時計師エドワード・ホイヤーがスイス・ジュラ山脈のサンティミエに工房を開いたことに始まる。当初からストップウォッチ機構に注力し、87年に今日でも主要時計メーカーの機械式クロノグラフに採用される「振動ピニオン」を発明して特許を取得。計時性能の高さが評判となり、20世紀になると各種スポーツとの関連を深めていく。1916年には100分の1秒単位の計測ができる世界初の機械式ストップウォッチ「マイクログラフ」を発表し、20年のアントワープ大会から3大会連続してオリンピックの公式計時を担当した。同時にモータースポーツの世界にも進出し、1911年に車載用ダッシュボード・クロノグラフ「タイム・オブ・トリップ」を開発。63年には1950年代の伝説のカーレース「ラ・カレラ・パンアメリカーナ・メキシコ」に着想して製作された「タグ・ホイヤー カレラ」を、69年には角形時計では世界初となる防水クロノグラフ「モナコ」を発表し、また世界初の自動巻きクロノグラフ「クロノマティック」を開発するなど、20世紀半ばにはクロノグラフの名門としての世界的地位を獲得した。なお、モナコは後にスティーブ・マックイーンが映画「栄光のル・マン」で着用したことで熱狂的ファンを生み出したことでも知られる。
1985年に社名をタグ・ホイヤーに変更。99年にはLVMHグループの一員となる。2000年代になるとトルクの伝達効率を高めるベルト伝達機構や、1万分の5秒単位での計測が可能な「タグ・ホイヤー カレラ マイクロガーダー」といった機械式時計の未来を感じさせる開発に取り組んだ。コネクテッドウォッチの分野にもいち早く乗り出すなど、新しい地平を開拓し続けている。