構造刷新、パフォーマンス全面向上
タグ・ホイヤーの「モナコ」は、1969年に誕生した角形クロノグラフの名作である。自動巻きクロノグラフムーブメント、キャリバー11を搭載し、防水性を備えた世界初の角形自動巻きクロノグラフとして登場。シャープなスクエアケース、9時位置側に配されたリュウズ、モータースポーツと深く結びついたイメージにより、半世紀以上にわたりブランドのアバンギャルドな精神を象徴してきた。
そのモナコに今年、極めて意欲的な新作「タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフ」が加わった。今回取り上げるのは、グレード5チタンケースのモデル。サテン&ポリッシュ仕上げを施したチタンケースに、ブルーオパーリン仕上げのインダイヤルを組み合わせ、モナコらしいシャープな造形に軽やかで現代的な印象を与えている。
ダイヤル越しには、香箱や輪列、テンプ、脱進機の一部が見える。単に機械を見せるためのシースルーではなく、クロノグラフという機構の働きを視覚的に伝える設計だ。9時側に設置されたリュウズ、それと呼応するかのような3時側のプッシュボタン、さらにサファイアケースバックを組み合わせ、歴史的なコードを守りながら装着感や操作性は現代的に見直されている。



タグ・ホイヤーを語る上で、クロノグラフは避けて通れない。創業以来、同社はストップウォッチ、ダッシュボード用計器、スプリットセコンドなど、クロノグラフ機構の開発に深く関わってきた。現代においてもブランドの中核を成す機構であり、“クロノグラフは譲れない”とする並々ならぬ自負さえ感じさせる。
今年の新作に搭載されたキャリバーTH80-00が画期的なのは、クロノグラフの内部構造そのものを見直した点にある。一般的な機械式クロノグラフは、スタート、ストップ、リセットを行うために複数のレバーやバネを連携させる。対してTH80-00は、従来不可欠だったレバーやバネの多くを省き、代わりに柔軟性を持つ二つの双安定部品でクロノグラフを制御する。一つがスタートとストップを、もう一つがリセットを担うという構造だ。

このコンプライアント クロノグラフ機構は、タグ・ホイヤー ラボが5年をかけて開発したもの。高精度LIGA(微細加工)テクノロジーで製造された双安定部品により、素早く歯切れのよい切り替えを可能にし、同社の発表によれば、最初のプッシュから1万回目の操作まで安定した操作感と精度をもたらすという。部品同士の摩耗や誤差の発生を抑えられるため、クロノグラフのパフォーマンスだけでなく、メンテナンスの面でも大きな利点を持つ。クロノグラフを得意とするタグ・ホイヤーが、得意分野の歴史をなぞるのではなく、その構造を根本から刷新することを目指した一本といえる。
ビジネスの世界でも、過去の成功体験を守るだけでは次の成長は生まれない。自らの強みを理解し、その強みを未来に向けて更新すること。タグ・ホイヤー モナコ エバーグラフは、そんな姿勢を雄弁に物語る。既存の仕組みを疑い、より高いパフォーマンスを追求するビジネスパーソンにこそふさわしいクロノグラフだ。

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LVMHウォッチ・ジュエリー ジャパン タグ・ホイヤー
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