Editor's Note
トレンチコートはもともと軍用外套(がいとう)。第1次世界大戦時にバーバリーとアクアスキュータム、二つのブランドがイギリス陸軍にトレンチコートを納品している。アクアスキュータムのそれはウール素材で、バーバリーのコットンギャバジン素材とは異なるとされる。これを当時のファッションリーダーで国民的英雄であった軍士官が着用したことから、トレンチコートは急速にイギリス庶民の間に広まった。また、1942年の映画『カサブランカ』で主人公を演じるハンフリー・ボガートがトレンチコートを粋に着こなした。当時、プロモーション活動中にアクアスキュータムのコートを着用していたことから、銀幕のヒーローが着ていた憧れのコートがアクアスキュータムのトレンチコートという連想が働き、男のためのトレンチコートとして、ブランドの名は世界中に知られることとなった。
Brand History
創業者ジョン・エマリーが、ロンドンのメイフェア地区に開いた高級紳士服店「エマリー&カンパニー」がアクアスキュータムの前身。1853年にはウールの防水加工法を開発し、その素材で作られたコートはクリミア戦争でイギリス軍兵士たちに提供された。1895年には、アクアスキュータム(ラテン語で「水の盾」の意)の名を正式にブランド名として採用。1897年、エドワード皇太子より最初のロイヤルワラントを授与された(皇太子が没したため、現在は失効)。第1次世界大戦中、アクアスキュータムの防水ウールコートは塹壕用コートとして重宝されたことからトレンチ(塹壕)コートと名付けられ、一気に広まるようになる。1960年には日本進出し、コートのみならず、トータルブランドとして展開している。なお、ハンフリー・ボガート自身がアクアスキュータムのトレンチを愛用していたという縁もあり、アクアスキュータムでは2016年秋冬に「The Bogart」というモデル名のトレンチコートをリリースしている。