Editor's Note
21世紀の幕開けと同時に突如現れた高級時計ブランドの新鋭。“時計のF1”というブランドコンセプト、異業種とコラボする時計づくり、そして時計の構造や外観に至るまでどれをとってみても斬新であり、それまでの高級時計の物差しでは測れないものだった。価格も破格で、創業当時のファーストモデルが1000万円超のトゥールビヨン、2018年現在は平均価格が1600万円を超える。さらに生産本数が極めて少ないことから、“誰もが手にできる時計ではない時計”として話題となり、富裕層の間でさえ所有すること自体がステータスであるような位置づけを確立している。
Brand History
1999年、フランスの高級宝飾ブランド・モーブッサンなどで時計ビジネスに携わっていたリシャール・ミルが、フランスで時計会社を設立。2年後の2001年に自身の名を冠したブランドで高級時計の世界にデビューする。リシャール・ミル本人は自身の役割を“コンセプター”と位置づけ、自ら設計やデザインを行うのではなく、自由な発想でコンセプトを練り、それを具現するのに最適な外部サプライヤーにパーツなどの製造を依頼する。彼が提唱するブランドコンセプトが“時計のF1”、すなわち軽量かつ強靭で、極限状態での使用にも耐えうる時計である。
ファーストモデルとなった「RM 001 トゥールビヨン」では、F1や航空宇宙産業で使われる素材や技術を採用し、ダイヤルにサファイアクリスタルを使用してトゥールビヨンのキャリッジと輪列を見せた文字盤と、まるで建築物かのような立体構造のトノー形ケースのインパクトが耳目を集めた。以後、それまでの時計製造ではまず使われなかったハイテク素材に着眼。カーボンファイバーやカーボンコンポジットをいち早く採用し、近年ではエアバス社のプライベートジェット専門チームとのコラボで生まれたチタン・アルミニウム合金製ケース、マクラーレン・ホンダがF1のレースカーにも使用しているグラフTPT (TM)など、その種類は枚挙にいとまがない。こうしたハイテク素材でつくられる時計の軽さや強靭さ、耐衝撃性などをアピールするために、ワールドクラスの一流アスリートをパートナーとして起用。カーレーサーやゴルファー、テニスや陸上のアスリートが着用したことも話題となり、世界的にその名を轟かせている。