Editor's Note

ハイビート・クロノグラフの名機エル・プリメロや薄型自動巻きのエリートなどムーブメントの品質が高く、それでいて求めやすい価格帯の製品を提供し続けてきたマニュファクチュール。スイス時計全体の価格が高騰する中で、現在も50万円台から本格機械式時計が楽しめる。デザイン的には2000年代になってダイヤル越しにムーブメントを見せるモデルが増え、ケースフォルムは正統的でありながら顔つきは未来的というスタイルが定着。2017年からLVMHグループウォッチ部門プレジデントで時計業界の重鎮、ジャン=クロード・ビバーがゼニス取締役会会長として指揮を執る。

創業年
1865年
創業地
スイス ル・ロックル
拠点
スイス ル・ロックル

Brand History

1865年、時計職人のジョルジュ・ファーブル=ジャコがスイスのル・ロックルで創業。それまで分業制だった時計製造を一つ屋根の下で行う効率的な体制を敷き、求めやすい価格帯の高品質時計を生産する。1900年に発表したムーブメントがパリの万国博覧会で金賞を受賞し、そのムーブメントに“天頂”を意味するゼニスと名付けた。1911年、創業者の引退を機に社名をゼニスに変更。20世紀初頭には、航空機や自動車など乗り物向けの各種計器を量産。第2次世界大戦後も高品質なムーブメント製造を続け、スイスの天文台コンクールでも優秀な成績を収める。1960年代後半に各社が取り組んだ自動巻きクロノグラフの開発競争でもリードし、69年に名機エル・プリメロを発表。世界初の自動巻き一体型コラムホイールクロノグラフで、毎時3万6000振動のハイスピードで10分の1秒まで計測可能というだけでなく、効率的な設計により他社の同等ムーブメントに比べて低コストで量産できたため、広く普及する要因となった。
その後、クオーツ時計に舵を切り、機械式キャリバーの製作図面、工具などすべての破棄を命じられる。時計職人シャルル・べルモは秘密裏にそれらを屋根裏へと隠し、1980年代の機械式時計製造の再開に伴ってそれらをゼニスに返却したことで、エル・プリメロが再び製造されることとなった。1984年に機械式時計製造を再開し、1994年に薄型自動巻きムーブメント、エリートを発表。2000年、LVMH グループの一員になる。2003年はエル・プリメロの脱進機を文字盤から見せる「オープン」コンセプトで人気を博す。2010年にはクロノグラフの10分の1秒計を備えたモデルを、2017年には100分の1秒計付きモデルを発表するなど、昨今はエル・プリメロの価値を再構築している。また、2017年には新型のオシレーター(発振器)を開発して、理論上は平均日差±0.3秒という革命的な高精度となる「デファイ ラボ」を発表。高精度化の旗手としても名乗りを上げた。