ファッションディレクターの青柳光則さんに、ビジネスシーンにふさわしいエグゼクティブのスーツの着こなしを提案してもらう当特集。7回目は、ドレッシーと軽快さを兼ね備えたBelvestのスーツを取り上げる。
仕事も遊びも思いきりこなせるクラシックなスーツ
カジュアルフライデーに、大切なお客様を迎えたり、重要な会議が入っても対応できるスーツスタイルを持っておきたい。相手や周囲から、TPOへの配慮ができていない人、と思われない着こなしをすべきだろう。きちんと端正にドレスアップしていながら、かしこまりすぎずカジュアルにもみえる、そんなスーツが一着あるといい。
ベルヴェストはさまざまな高級ブランドのスーツを手がけてきた歴史がある。それぞれのブランドスタイルとシーズンごとの要望に対応できる高い技術力を有しており、その実力を遺憾なく発揮したオリジナルのスタイルがある。それゆえこのブランドには、ドレッシーなルックスに軽い着心地を両立するスーツがそろっているのだ。
たとえばこちらのチェック柄のスーツ、見た目にはドレスアップに相応しいフォルムだが、肩や胸周りの芯地は一般的なスーツに比べてごく薄く軽量で、仕立ても非常に軽快なもの。「スフォデラート」と呼ばれるイタリアの伝統的な仕立て技術を用いたものだ。サヴィルロウに代表される英国式のしっかりと硬い仕立てではなく、曲線を多用し見た目も着心地も軽快なイタリア式の服は、ビジネスとプライベート両方のシーンで通用する優れたスタイルを備えているといえるだろう。
タイドアップしながらも堅苦しさを感じさせない雰囲気は、コンパクトな肩周りと優雅に翻るワイドな下襟、見るからに柔らかそうなフォルムからにじむもの。チェックの柄使いも端正だが、しっかりとパーソナリティを表現できる。仕事では品格を損なわず、遊びの場に着ていけば人柄をさりげなくアピールできるので周囲が親近感を抱くだろう。若々しく清涼感のあるネクタイとシャツの組み合わせれば、季節感を取り入れた着こなしになる。
イタリアン・クラシコをこそ、エグゼクティブに着てほしい
一般的に無地のスーツには柄物のネクタイ、柄物のスーツには無地のネクタイが合わせやすい。しかし、今回のように白シャツにネクタイを合わせる際、白地の多い柄を使えば、スーツの印象は清涼感を増す。春から初夏にかけて、好印象を与えてくれるVゾーンメイクだ。あえて柄×柄で合わせるテクニックの一つとして覚えておくといい。また、ストライプスーツにストライプシャツやネクタイを合わせるなら、縞の太さやピッチに差をつけるのが鉄則だ。
チェック柄は英国由来のグレナカート(グレン)チェックをマイクロ柄にすることでグラデーション風にアレンジしたもの。柄目立ちより生地の風合いが立つ印象に和らげられている。クラシコ・イタリア協会に所属するメゾンは、イタリアの伝統に則った保守的な服作りをしているように思われる節がある。しかし、今回取り上げたスーツのように、生地の色柄などにはトレンドを打ち出すものも多くあり、見逃せない。
ファッションディレクター青柳光則からワンポイントアドバイス
「ベルヴェストは北イタリアのマシンメイドスーツ最高峰のブランドといわれ、ビジネスプロトコルに見合った仕立てではありますが、着心地は南イタリアの仕立て服のようにソフトコンシャスでストレスがなく非常に軽いのが特徴です。生地の色柄もビジネス、プライベートといったように明確に規定するのではなく、さまざまなシーンに使いやすいものが多いと思います。ビジネスにもプライベートにもグローバルに通用する、そんなブランドなのです」
styling:Mitsunori Aoyagi(Hamish)
photograph:Ryohei Watanabe
hair & make:Akira Nishihira
model:Kenji Kureyama(BARK IN STYLE)
edit & text:Yasuyuki Ikeda(zeroyon)