前回は、定番ビジネスコートの選び方を解説した本企画。今回はその実践編として、ステンカラーコートのスマートな着こなし方を写真とともに解説する。ビジネスに用いるコートは往々にして控えめかつスタンダードなデザインが多い。しかも体全体をほぼ覆ってしまうアイテムゆえに、着こなしで個性を主張しないことには埋没してしまいがち。そこで、少しの工夫でワザとらしくなく、スマートな洒落感が演出できるテクニックを披露する。手軽に明日からイメージアップが図れること間違いなしだ。
1.スーツと“同系色”で合わせる
“同系色”のコーディネイトは服装術の基本。もちろん、このテクニックはコートスタイルにも当てはまる。もっとも一般的なのがブルー系で統一した着こなしだ。ブルー系の色味はさまざまあり、ネイビーからブルー、サックスブルーなど複数のトーンにわたって存在する。これらを駆使した着こなしは、若々しく、清潔感溢れる印象になるところが特徴だ。ポイントとなるのがコートからスーツ、シャツ、タイに向ってグラデーションを描くよう徐々に色みを明るくすること。そうすることで統一感と同時に美しいメリハリ感を備えた装いに仕上げられるのだ。もちろん、グレーやブラウンのグラデーションスタイルも洒落た印象になるが、ブルーのアイテムはバリエーションが多く、しかも他のスタイルに転用しやすいところが大きなポイント。ゆえに着こなしの第一歩はまずブルーから始めるのがよいだろう。
SANYO(サンヨー)
コートの老舗サンヨーが、今季渾身の一着をリリース。高いレベルの耐水圧と透湿性の両立という驚きの高機能を誇る素材を使用している。超音波の溶着による特殊ミシンで縫製を行っており、縫い代がないため非常に柔らかな着心地とルックスを実現しているのも特筆に値する。単体でも着用可能なダウンベストのインナーが付属し、真冬でもスタイリッシュに暖かく着こなすことができる一着。
インナーダウンはボタン脱着式。コートから外してベストとしての単体使いも可能だ。しかもこのコートはフロントボタンを開きつつ、インナーダウンは閉じた状態での着用も可能。つまり、今トレンドとして話題のスポーツミックススタイルが手軽に実践できるデザインとなっているのもうれしいポイント。
2.後姿にワンポイントを加える
ステンカラーコートにも腰ベルトを付けたモデルがよく見られる。本来は風によるバタ付きを抑える実用装備だが、そのベルトをフロントで締めるのは今の流儀ではない。大袈裟なルックスになりがちな上、脱ぐ際に面倒にもなるからだ。ならば「ベルトなしモデルを」となりがちだが、それも早計。ベルトがあることで平板になりがちな後ろ姿をドレッシーに引き締めることができるところに着目したい。ベルトは結ばず左右の腰ポケットにベルト先端をしまっておくだけ。これならワントーンの着こなしも平板にならず、軽妙なエッジを自然に加えることが可能だ。
麻布テーラー(AZABU TAILOR)
自分の体型や趣味嗜好にマッチした一着が作りだせるオーダーメイドのショップとして知られる麻布テーラー。実はスーツのみならずコートもオーダーすることができる。ラグランベルテッドコートをはじめ、トレンチコートやチェスターコートなど各種自在に選べるのもうれしいところ。ベルトの有無だけでなくエポレットなどのパーツも好みに応じてセレクトできる。
写真の一着はイタリアの名門生地会社であるカノニコ社のウールフラノ生地を使ったベルト付きステンカラー。生地や仕様によってオーダー価格が変動する。
腰ベルトのみならずボタンの種類、裏地などのディテールが選べる。世界に一着だけのコートによる装いならば、ビジネスタイムも特別なものとなる。
3.軽く衿を立てる古典ワザ
コートのこなし技としては古典的ともいえる衿立てのテクニック。テクニックというほどのモノか議論の余地はあるが、意外に印象が変わるから実に面白い。コツとなるのは衿全体を立ち上げてしまうのではなく、奥衿部分のみを立たせ、フロントは寝かせる“半立ち”状態にある。ひと手間どころか一瞬にて実現できるこなし技だが、男らしく凛々しい雰囲気になるのは確実。寒い日などは衿を立てることにより、首裏の冷えを解消できるところもポイントだ。ただし、屋内に入ったときなどは衿を正すことを忘れずに。TPOをわきまえ実践することで、お洒落のテクニックは粋なものとなる。
MACKINTOSH(マッキントッシュ)
英国コートの象徴として世界中にファンの多いマッキントッシュのコート。なかでも優れた防水性を誇るラバライズド(ゴム引き)コートは、ブランドのアイコンだ。この一着は表地にウールの千鳥格子を張った極めて英国的な新作。ボンディング(接着生地)ならではのハリのあるタッチが味わい深いシルエットを作り出す。
裏側は今季のトレンドカラーでもあるグリーン。縫い目には丁寧にシーリングが施されている。シーリングはひとつひとつ熟練の職人が手作業で行うという。
マッキントッシュのラバライズドコートといえば、コットン地をイメージする人も多い。しかしこの一着は温かみあふれるウール製。トレンドの英国古典柄もここまで細かい柄行きならば、ビジネスでも違和感なく使用できる。
4.脱着式ライナーでボリューム感をおさえる
厚手のコットン素材に裏地を貼った仕様がトラッドなステンカラーコートだ。一般的なスーツ地などに比べて防風性(場合によっては撥水性)はあるものの、伝統的なステンカラーコートに真冬用の保温性は期待できない。その弱点を補う形で、昨今は中綿式などのライナーを加えた多機能ステンカラーコートが種類豊富にリリースされ人気を博している。脱着式のライナーの場合は、取り外すことで春先まで使用できるのが大きなポイント。また保温性に優れたライナー付きならば、厚手のニットを着込む必要もなくなり、ボリューミーになりがちな冬の通勤スタイルをスマートにおさえることもできるのだ。
D'URBAN(ダーバン)
ハイテクを駆使した3層構造のゴアテックス素材を使った次世代ステンカラーコート。フロントはボタンのほかジップも装備しており、優れた耐久防水性と防風性を発揮する。その他、撥水や透湿機能を備えているのも見逃せない。腰ポケットには止水ジップを配したデザインとなっている。
内側には中綿ライナーを備えており冬季も温かく着こなせる。ライナーは脱着が簡単なボタン式。3シーズン着回すことができる。
問い合わせ情報
SANYO SHOKAI TEL:0120‐340‐460
麻布テーラープレスルーム TEL:03‐3401‐5788
マッキントッシュ青山店 TEL:03‐6418‐5711
レナウン プレスポート TEL:03‐4521‐8190
styling:Mariko Kawada
edit & text:Zeroyon Lab.
photograph:Tatsuya Ozawa(Studio Mug)