デザイナーであり職人でもある五十嵐徹さん
学生時代からファッションデザイナーを目指して自身のブランドを立ち上げたという五十嵐さん。コム デ ギャルソンのデザイナー田中啓一氏を師と仰ぎ、卒業後はパンツ職人の下で修行を積むと若干20代で独立。気鋭のパンタロナイオ(パンツ職人)として、ストラスブルゴのテーラーズラボに参加、後に自身の工房を開いている。
現在は多くの職人を抱える工房を甲府に構え、分業制でパンツの生産にあたっている。生産数は年間約2000本と、この規模の工房にしては数量が多いが、仮縫い込みで約2カ月という納期は、各職人の腕の良さが際立つがゆえ。五十嵐さんは、デザイナーとしてパンツの提案とともに、職人としての経験からこだわりの仕立てを実現する。テーラーにおけるモデリストの役割を担っているのだ。
こだわりのパンツを「イガラシ トラウザーズ」でビスポーク
たとえばベルトレスのパンツは、きちんと採寸したうえで腰にぴったりとフィットさせなくては、はいているうちにずり落ちてしまう。ビスポークのパンツにベルトレスが多いのは、正しい採寸をしているからだ。微調整に使うサイドアジャスターは、装飾的な要素としてとりつけられることもあるのだ。また最近では、これまでのノープリーツパンツに代わり、ウェストにブリーツを入れることでシルエット的に余裕を出し、裾にかけてシルエットを絞り込んだテーパードシルエットのパンツが人気となっている。ビジネススタイルにテーパードシルエットを取り入れるか、あるいはこれまでどおりのノープリーツを選ぶかなども、五十嵐さんと相談するのが良いだろう。
都心の隠れ家的アトリエでパンツをオーダー
イガラシ トラウザーズのアトリエは、工房を併設する甲府市と、赤坂の一等地の2カ所。HPからアポイントを入れると五十嵐さんが直々に採寸してくれる。このとき、単に寸法の計測だけでなく、どのようなシーンではくパンツなのかはもちろん、仕事はデスクワークが多いのか、それとも外出が多いのか、普段の好みの服装や趣味など幅広い会話を通して、五十嵐さんがパンツのデザインを見立ててくれる。
選びぬかれた生地のバリエーション
有名生地ブランドのバンチブックが多数並ぶアトリエには、貴重なビンテージ生地の用意もある。なかでもお薦めは「カチョッポリ」や「ドラッパーズ」。イタリアらしいトレンドの色柄生地を豊富に揃え、カジュアル用のコットン生地も多彩だ。
五十嵐さん監修の既製品パンツは+CLOTHETで
+CLOTHETでは、五十嵐さんが型紙を監修したビジネス向けのウールパンツから、カジュアル向けのコットンパンツまで既製品で購入できる。素材にはストレッチを混紡したものや、ジャージー素材を採用。細身でも膝や腰まわりの伸縮がノンストレスなパンツは、国内大手の生地メーカーが手がけるブランドならではのものといえる。
text:Yasuyuki Ikeda
photograph:Tatsuya Ozawa