スタッフ1時間独り占め。手厚いオンラインサービス
ポール・スチュアートの創業は1938年、ニューヨークのミッドタウン45丁目でのこと。以来、英国のサヴィル・ロウに米国式解釈を加えた大人のエレガンススタイルを提唱し、高い支持を得ている。
その日本での旗艦店が、2020年11月に表参道から外苑前に移設オープンした「ポール・スチュアート 青山本店」だ。重厚でクラシックな雰囲気だった表参道店に対し、新店舗は白とガラスを基調とした明るく洗練された空間が印象的。ワンフロアの店内に「コリドー(回廊)」と呼ばれる中央の広いスペースを介して左側奥にメンズテーラード、手前にメンズカジュアル、右側にウィメンズを展開し、青山本店限定品を含めフルラインアップがそろう。
店内奥にはバー「The COPPER ROOM(ザ コッパー ルーム)」を設置。銀座や六本木に店を構える会員制バーと提携し、一流のバーテンダーがドリンクを提供する(6月1日現在、酒類の提供は休止中)。買い物の終わりに一息ついたり、バー目当てでやってくる人も多いという。コリドーではポップアップショップを定期的に開催。これまでケニア産のバラや西洋アンティーク家具、ロシアの蜂蜜、文具類などバラエティに富むアイテムを展開している。
この春から青山本店で始まったのがZOOMを利用した「オンライン接客サービス」だ。公式サイトから会員登録を行い、身長やウエストのサイズ、服の好みや要望、実際に見たい商品などを入力すれば、事前におすすめの商品やオーダー用の生地、サイズゲージ(サイズ見本)などが指定の住所まで届けられる(往復送料無料)。自宅に居ながらにして実際の素材やサイズ感を確認でき、60~90分の間、希望のスタッフから無料でアドバイスを受けられるという手厚いサービスだ。パターンオーダーにも対応。支払いは商品の届け時にヤマト運輸の代金引換(現金・カード)で行う。
ポール・スチュアート 青山本店
東京都港区北青山2‐14‐4 ジ アーガイル アオヤマ1階
TEL:03‐6384‐5763
オンライン接客サービス
https://www.paulstuart.jp/webcontact/
「大人に優しい」パンツなど小技の効いたアイテムも
そんなポール・スチュアートが提案する「これからの仕事服」について、同ブランドの販売企画を担当する高橋純さんと服飾企画の村山賢伍さんに聞いた。「大人らしいエレガンスやきちんと感を保ちつつ、快適性や機能性を高めたアイテムをおすすめしています。天然素材をベースに上質な素材を使用し、一つのアイテムでさまざまな着こなしが可能なものをそろえています」。
そうした視点で選んでもらったアイテムの一つ目は、主に出張時の利用を想定して展開されている「STUART'S TRAVELER」の今春夏の新作から。ビジネスシーンはもちろんのこと、ニューノーマル時代のさまざまな場面で活用できるセットアップだ。
「尾州の織物工場と協同でつくったセットアップです。ウール糸にナイロンを巻き付けた特注糸を編み上げたもので、サラっとした清涼感が特徴。毛芯やパッドなどの副資材を一切使わずに構築的なフォルムを保型できる生地と仕立てで、着心地のよさと姿の美しさを両立します。シンプルなデザインで、リモートワークはもちろんのことオン・オフ問わず着用できます」。インナーにはドレスシャツからポロシャツ、Tシャツまで合わせられる懐の深さが嬉しい。
続いてのセレクトはドレスシャツ。「襟の立ち上がりがきれいなワンピースカラーは、ノーネクタイでもエレガントに決まります。社内のオンライン会議などでジャケットを脱いでもだらしなく見えません。形態安定のロイヤルオックスフォード生地で、洗濯後はさっとアイロンをかければ着られるのも便利です」。
最後のアイテムはパンツ。接触冷感やストレッチなどの機能性に優れつつ、ラインの美しさでオン・オフ両用ができる。
「綿とポリエステルがほぼ同率で混紡された接触冷感の生地で、特にこれからの季節に快適に履いていただけます。大きな特徴はウエストの仕様。表からはそうとわからないゴムとベルト生地の工夫でウエストまわりが伸長し、見た目はあくまでエレガントでいながら座っても楽、を実現しています。ウエストサイズの増加3cm程度は余裕で対応可能です」
今回提案してくれたアイテムは、どれも生地を一から開発したり仕立てに工夫を施したりといったものばかりだ。そこに通底するのは、快適性を追求しつつもただ楽なだけではなく、いかに大人の男性をエレガントに見せるかという意識である。流行に流されない確固たるスタイルを持つブランドならではの流儀が感じられる。
text:d・e・w
photograph:Yuuki Kurihara