ヒストリックカーの魅力とは

コンコース・デレガンスにおける「ベスト・オブ・ショー」はアルファロメオの「8C2300Bトゥーリング・ベルリネッタ」(1937年)。ビバリーヒルズに住む現オーナーは「グランプリカーのシャシーに美しい軽量ボディを載せた、みごとなコンビネーションを愛して購入しました」と語っている。

1948年に「タッカー48」を発表し、翌49年に倒産してしまったプレストン・タッカーの幻のクルマにはいまもファンが多い ©Pebble Beach Concours d’Elegance

今回の変わりだねは「スペシャルクラス」として「タッカー48」が設定されたこと。じしんがタッカーのオーナーであるフランシス・フォード・コッポラの映画「タッカー:ザ・マン・アンド・ヒズ・ドリーム」(1988年)で日本でも知られるようになったスタイリッシュな4ドア車だが、予約販売としてお金を集めておきながら51台を製造した時点で倒産してしまった。

タッカーの倒産については、当初からそれを計画していた詐欺事件だとする見方があるいっぽう、コッポラのように自動車を愛した実業家の悲しむべき挫折とするファンも少なからずいる。そんなことを思いながら、美しい状態で保存された実車の数かずを観られるのもまた、ペブルビーチならではの楽しみなのだ。

クルマのいいところは往々にして語るべきストーリーがあることだ。ヒストリックカーだとそれがより深く、場合によっては複雑に、そしてまた味わいぶかいものとなる。たまには古いクルマのこともいいでしょう?

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。