操縦する楽しみを追求したクルマ

上下幅の狭い楕円形のリアコンビネーションランプに「BENTLEY」の文字が新しいポイント

走らせると、期待どおりパワフルだ。かつ期待をはるかに超えて、スポーツカー的なドライビングが味わえる。12気筒エンジンは635psの最高出力と900Nmの最大トルクを発生する。アクセルペダルのわずかな踏み込みに対しても、胸のすくような加速感をもたらす。

このエンジンは前後サイズをコンパクト化して、質量のマスをより中心に集めてハンドリングに貢献しているのも特徴だ。ちょっと専門的になってしまうけれど、新型コンチネンタルGTは脚まわりにも凝っている。

空気の量を増したエアダンパーと、「ベントレーダイナミックライド」がスポーツ性に大きく恩恵を与えている。後者は、電子制御のアンチロールバーによりタイヤの接地性を高める(=しっかりパワーを地面に伝えて速く走る)働きを持つのだ。

はたしてカーブを曲がるのがこんなに楽しいクルマがあるだろうか。運転すると心の底から感心する。ドライブする自分の動作がダイレクトにクルマに伝わっているようだ。

すばらしい効きを示すブレーキ(これが高性能車の証)と、ステアリングホイールの切れ角にすばやく応答する車体の動きは、コンチネンタルGTが従来の速いGTから、スポーツGTになったことを感じさせる。

ダッシュボードのインフォテイメント用TFT画面はボタン操作でこのように変更される

内装は、いっぽうで、伝統的な英国の高級車の世界観をうまく採り入れている。たとえばウッドの種類が豊富なリストから選べるパネル類や、やはり種類も色も豊富なレザーである。

クロームに輝く操作類は手が触れるところに、工芸品のような細工がしてある。もちろん操作感もよく考えられており、インフォテイメントや安全装備など、最新の電子制御システムによる先進性を巧妙に“隠して”いる。

「ダイヤモンド・イン・ダイヤモンド」というオプションの特別キルティング
おとなが乗るにはやや狭いが大事な荷物を置くなど使い勝手はいいリアシートのスペース

走りは先進技術を使いながら、クルマがこの世に作られて以来変わらない操縦する楽しみを追求している。インテリアはより手のこんだオプションを用意することで、特別感を強調と、伝統と革新ともいえる世界観をうまく両立させているのだ。

価格は2568万円と、誰でも気軽に乗れるクルマではないけれど、これは本当に“いいもの”だと感じた。こんなモノづくりの世界がずっと残っていたほうが、人生は楽しいだろう。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

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