高いパフォーマンスを出すためには

――きょうの服装は「TEAM SEIKOスーツ」ですね。セイコーホールディングスのアスリート社員のオフィシャル服で、記者会見や試合遠征などの際に着用するとうかがっています。ファッションで気を付けていることはなんでしょうか。

【山縣】自分の職業は“見られる”職業だと思っていますから、清潔感を失わないようにと意識しています。最低限、シワシワの服は着ないようにしています。

時計は「セイコー アストロン」を選んできました。世界を飛び回ることが多いので、簡単なボタン操作で現地の時間に合わせられて使い勝手がいいんです。そのうえ、高級感があって周りから見られても恥ずかしくない点が気に入っています。

陸上100mの山縣亮太選手は今シーズン、8月のアジア大会は10秒00で銅メダル、続く9月の全日本実業団陸上は10秒01で優勝と、安定した強さを見せた。

――アジア大会と全日本実業団陸上ではともにレベルの高い走りでした。常に高いパフォーマンスを出すために意識していることは何でしょうか。

【山縣】自分の取り組む課題を言葉にすることを意識しています。たとえば、アジア大会ではスタートがうまくいったので、実業団の試合でもそれを再現するといった具合に、自分が次のレースで何を達成したいかを言語化するのです。そうやって一試合ごとに課題を設定し、走りを向上させていきます。

――アジア大会と実業団の試合では、課題の設定を変えたわけですね。

【山縣】アジア大会は、アジアを代表する選手ばかりが集まりますから、少しでも気を抜けば、予選や準決勝で敗退しかねません。それがよい緊張をもたらし、スタートから30mまでの加速がうまくいきました。

実業団の試合でアジア大会と同じパフォーマンスを実現しようと思えば、アジア大会以上に自分で気持ちを高めなければなりません。アジア大会では30mまでを全力の90%で走る意識でしたが、実業団では95%まで引き上げる気持ちで挑みました。

――体調や条件が違っても2レースとも良いパフォーマンスでした。

【山縣】パフォーマンスを構成する要素はいくつもあります。私は身体、技術、メンタリティの3つに分けて考えています。

身体は風邪をひいていないか、どこか痛いところはないか、食事や睡眠はしっかり取れているか。

技術はスタートから30mをどう走るか、30mから60mをどう走るか、ということです。

メンタリティは良い緊張感をもって試合に臨めているかといったところです。

この3要素を常に高いレベルで保とうと考えています。なかでも一番大事にしているのが身体のコンディションです。

――7月の欧州遠征でロンドンの試合を回避したのは、身体の調子が悪かったからですか。

【山縣】違和感程度でしたが、足の内側を軽く痛めていました。出場することでよけいに身体を悪くしてしまう可能性がありました。すると今シーズン、一番大切に考えていたアジア大会に影響が出てしまいます。それを避けるために出場を諦めました。

――試合に出場するか、やめるかは選手として大きな判断ですね。

【山縣】今まで怪我に泣いてきた競技人生です。身体のどこかに少しでも気になる箇所があれば、それは危険のサインです。いい記録を出す可能性よりも、もっと大きな確率で怪我をするリスクがあります。理想を捨てるべきだと思いました。