「TEAM SEIKO」結成の狙いとアスリートを支援する理由~服部真二CEOに聞く

「TEAM SEIKOスーツ」を着た山縣亮太さん(左)と服部真二さん(右)。銀座・和光時計塔にて

――セイコーホールディングスは今、陸上短距離の山縣亮太さんらアスリートを社員として採用していますね。

【服部】山縣に始まり、現在、社員として女子陸上短距離の日本の第一人者である福島千里、トランポリンの棟朝銀河、所属契約で競泳バタフライの坂井聖人、合わせて4人のアスリートが「TEAM SEIKO」を結成しています。

――どのような動機で、アスリートの採用に踏み切ったのですか。

【服部】私たちは2014年に「時代とハートを動かすセイコー」をグループスローガンに掲げました。時代とハートを動かすためには、セイコーがモノづくりで大切にしてきた正確さ、精密さだけでなく、スポーツファンのみならず多くの人と感動を分かち合うことが不可欠だと考えたのです。その一つが、アスリートの活躍を通じて、世界中の人たちと感動を共有することです。それでオリンピック選手を社員に採用したのです。

――山縣さんは各大会で大変活躍しています。

【服部】リオデジャネイロオリンピックの男子4×100mリレーでは、期待以上の銀メダルを取り、私も大いに感動しました。まさに当社のスローガンを具現化してくれた瞬間で涙があふれました。

――山縣さんの採用に当たっては、人間的な魅力にも惹かれたのではないですか。

【服部】むしろ入社後に感心したことが多いですね。学生時代の彼については、10秒07で走る速い選手だという程度の印象でした。彼がセイコーの社員になってから、とても勝負強く、研究熱心な性格だと知りました。

将棋の羽生善治さんや長野オリンピックのスケート競技で優勝した清水宏保さんを尊敬し、著書などからその勝負強さを学んでいます。特に清水さんからは、スケート界で「世界一」と言われたロケットスタートの秘密を直に聞いたこともあります。

――山縣選手のとことん突き詰める性格が手に取るようにわかります。

【服部】もう一つ挙げられる彼の魅力は、諦めない性格です。山縣は怪我に幾度も泣かされてきました。怪我に苦しみ、なかなか自己ベストを更新できない時期も長かった。しかしそこで諦めず、復活してくる強さがあります。2020年の東京オリンピックでは間違いなく活躍を期待される一人だと思います。

私たちは「TEAM SEIKO」として、山縣を含め4人のアスリートを社員全員で応援していきます。

山縣亮太/Ryota Yamagata
リオデジャネイロ五輪男子4×100mリレーの第一走者として銀メダル獲得に貢献。男子100mでは日本歴代2位タイ(10秒00)を二度記録している。慶應義塾大学卒業後、2015年セイコーホールディングス入社。

服部真二/Shinji Hattori
慶應義塾大学卒業後三菱商事を経て、1984年精工舎に入社。2003年セイコーウオッチ代表取締役社長、2017年代表取締役会長兼CEO。2010年セイコーホールディングス代表取締役社長、2012年代表取締役会長兼グループCEOに就任。

text:Top Communication
photograph:Sadato Ishiduka