サイズが手頃で、ちょっと個性的
スウェーデンのVolvo Cars(ボルボ・カーズ)はこのところ魅力的な新車をいくつも発表している。2017年の「XC60」をはじめ、連載で紹介したステーションワゴン「V60」(本国ではセダンの「S60」も出た)、そしてややコンパクトなサイズの「XC40」だ。
このXC40は、手ごろなサイズで、扱いやすく、かつ少し個性的な外国製SUVを探しているひとに、強く勧めたくなるモデルなのだ。
XC40の魅力は、いろいろある。ひとつは大胆なスタイリングだ。バンパーとエアダムとすべてが一体化したフロントマスク、クラムシェル(二枚貝)型と専門用語で呼ばれるボンネット、後方で上に強くキックアップしたベルトライン(窓の下のライン)、それに塗り分けが選べるカラースキームも特徴的だ。
もうひとつの魅力は、大きくいって走りにある。
日本には2種類のガソリンエンジンが用意されている。140kW(192ps)の最高出力と300Nmの最大トルクを持つ「T4」と、185kW(252ps)と350Nmの「T5」だ。
どちらを選んでもパワフルだ。ちょっとトイカーのような感覚のスタイリングから想像できないほどよく走る。基本はAWDという全輪駆動で、T4には前輪駆動の設定もある。
コーナリングもしっかりとふんばり、ロールは大きくない。かたちはヨンク(四駆)だが、操縦性は乗用車だ。それもどちらかというとスポーティに振ったものである。つまり楽しいのだ。
さらに実用的なパッケージングもこのクルマの長所だ。全長は4425ミリと比較的コンパクトだが、室内は広い。前席は空間的な広さを感じさせ、後席は頭も足元もたっぷり余裕がある。
前席のドアポケットにはラップトップ型コンピューターもすっぽり収まるようにオーディオのスピーカーの取り付け位置を工夫するなど、まさに現代的な機能主義にもとづいてデザインされているのだ。
XC40はさらに仕様がいくつかある。ベーシックな布張りシートに小径タイヤの「モメンタム」にはじまり、装備が豊富な「インスクリプション」、それにちょっとスポーティな仕立ての「R-DESIGN」だ。
どのモデルにもそれぞれ魅力がある。なので用意される装備とか内装の仕様で決めていけば、失望することはないだろう。なかでも私だったらこれかな、と思うのは「T4 モメンタム」だ。
理由は、すばらしくソフトな乗り心地にある。ほかの仕様もけっして悪くないのだが、とりわけ気持ちがいい。路面の凹凸はきれいにカットしてくれるうえに、ほとんど上下動が感じられない。雲に乗ったらこんなかんじだろうか、と思うほどだ。
「T4 モメンタム」のタイヤサイズは18インチと「R-DESIGN」などに較べるとやや小さめだ。それもおそらく乗り心地に貢献しているのだろう。ベーシックモデルの17インチ装着車はさらに乗り心地がいいらしい。でも18インチだって悪くない。そこが感心するところだ。
ボディカラーもルーフと車体とで色が違うコントラストカラーを選ぶことが出来る。イメージカラーのスカイブルーの車体に白のルーフの組み合わせは軽快感がある。いっぽう濃いめのブルーメタリックのモノカラーは重厚感が出て、けっこうキャラクターが変わる。
自分だったら、どのモデルを、かつどんなボディカラーを買おうか、と迷うのが楽しい。たとえばMINIよりも、選ぶ車体色でオーナーの主張が違ってくるように思う。軽いかんじで乗るのが好きなひとか、重々しく見せたいのか。
私ならもっともベーシックな「T4」(389万円 税込)がいいかなと思うが、その上の「T4 モメンタム」(439万円 税込)だと、電動調整機能つきフロントシート、ワンタッチ分割可倒式シートバック、ナビゲーションシステム、2ゾーンエアコンがおごられる。さらにオーディオが3スピーカーの80ワットに対して8スピーカーの250ワットになるのだ。
50万円の価格差をどう考えるか、である。じつは私はこのあたりが、XC40のおもしろいところだと思っている。基本的な走りのよさと快適性があれば、あとはスマートフォンなどでなんとかなる、という層にもちゃんと門戸が開かれているからだ。
いま、80年代のちょっと古いクルマが人気のようだが、そういうのを好きなひとが新車を買おうと思ったら、XC40のベーシック仕様でいいかもしれない。選択の幅が広い。それこそ真の意味でライフスタイルカーといってもいいだろう。
小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。