ウィンタースポーツは飛行機で、というひとも少なくないだろう。しかし、クルマで陸路を行くのも、じつは楽しい。ドライブを含めて満喫する、というウィンタースポーツの楽しみ方はどうだろうか。

もし、「私をスキーに連れてって」に2019年度版があるなら、そこにお薦めの1台は雪の王者スバルのベストセラー「フォレスター」だ。東北電力の作業用として四輪駆動乗用車を開発した歴史を持つスバルでは、70年代から今日にいたるまで、四輪駆動を大きな看板として掲げてきた。それだけのことはある出来なのだ。

フォレスターが雪上でどれだけのポテンシャルを持っているか。スバルではそれを知ってもらいたいと、2019年2月に山形で試乗会を開催した。通常、特設コースでモーグルとかパイロンスラロームという場合が多いけれど、今回は「リアルワールド」と同社が呼ぶ一般道での試乗だった。

フォレスターには前60と後40の駆動力配分を基本にした「アクティブトルクスプリットAWD」なるシステムを搭載

「刻々と変わる環境下で総合的な安心感をベースとした楽しさを体感していただきたい」。スバルの広報部はそう語り、フォレスターの全モデルを用意してくれた。

フォレスターは、2.5リッター水平対向4気筒エンジン搭載の「ツーリング」「プレミアム」それに「Xブレイク」と、2リッター水平対向エンジンに電気モーターを組み合わせた同社が言うところの「e‐BOXER」の「アドバンス」の4車種で構成されている。

シンメトリカル4WDという低重心のAWD(常時全輪駆動システム)と、リニアトロニックと呼ばれる無段変速機の組み合わせは、全車共通だ。

肘折(ひじおり)温泉ちかくを集団で走る

山形では酒田市内を起点に、鶴岡市などを経由して山形駅までの200キロを装備の豊富な「プレミアム」と、マイルドハイブリッドの「アドバンス」で走った。

この2台はパワートレインゆえのキャラクターの差がけっこう明白だ。2.5リッターの「プレミアム」は軽い踏力しか要さないアクセルペダルの設定もあり、出足がかなり力強く感じる。逆にいうと、無造作に運転をすると乗員が不快になる可能性がある。

いっぽうe‐BOXERの「アドバンス」は、従来型より、立ち上がりのトルクが力強くなっているものの、電気モーターゆえ、走り出しはよりジェントルだ。すっと発進する。そのあとエンジンがかかったときのフィールも自然で、トルクの山に乗っかって加速していくかんじが気持ちよい。

ブレーキを自動で調整して軌跡が乱れにくくするアクティブトルクベクタリング機能を標準装備

スバルでは雪道をより安心して、かつ快適に走れるようにと、細かなチューニングに余念がない。「アドバンス」でいうと、ひとつは緩くブレーキペダルを踏んだとき、バッテリーをチャージするための回生システムが働くときの対応だ。

通常、このときは前輪に予想外の制動がかかるため、カーブでは後輪が車体を外側に押しだしていくアンダーステア現象が起きやすい。そのため「アドバンス」では電子制御を使って後輪へのトルクを調整してニュートラルなステアリング特性を保つようにしている。

もうひとつは、発進や段差を越えるとき、アクセルペダルを必要以上に踏みすぎることがないよう、トルクがたっぷりある電気モーターの作動領域を広げている。それによって自然な加速感が得られると説明されているのだ。

実際に2車ともに、ブリヂストンの「ブリザック」というスタッドレスタイヤを履いていたこともあり、じつにナチュラルな感覚で雪道を走ることが出来た。山道でもコーナリングは安定しているし、アクセルペダルとブレーキペダルを使った加減速も違和感がない。

広大で使いやすい荷室(写真はオプションのレザーシートを備えた「アドバンス」)

外は零下の気温だったこともあり、肩までヒーターが埋め込まれたシートヒーターはじつに有効だった。かつ、足元を暖めることを主眼に吹き出し口の位置を考えたというヒーターの効きも抜群である。

広い後席と、広大な荷室も、フォレスターの大きな魅力だ。東京をはじめ日本全国で販売好調で、スバルのベストセラーというのは、いちど試してみるとよくわかるはずだ。

全長4625ミリ、全幅1815ミリのボディサイズは山道で大きさをもてあますことがない。スキーに連れていくのが家族でも恋人でも、そのときは、快適なフォレスターを最有力候補にしてよいと思う。そういえば、ここでは触れていないが2.5リッターの「Xブレイク」というモデルは、撥水性の強いシートなど、ウィンタースポーツ向きの仕様である。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

問い合わせ情報

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スバル・フォレスター
価格:

「ツーリング」280万8000円(税込)

「プレミアム」302万4000円(税込)

「Xブレーク」291万6000円(税込)

「アドバンス」309万9600円(税込)