メルセデス・ベンツのニューモデル、「Bクラス」は期待以上によく出来ている。ハッチバック車は、トレンドとしてSUVに押されがちと言われるが、2019年6月にメルセデス・ベンツ日本の手で輸入が開始された「B180」は、いまいちど、ハッチバックのよさを思い出させてくれるモデルだ。

ハッチバックのよさとは、ひとことで言うと、機能性にある。全体はコンパクトにまとめておきながら、積載量と室内空間とそれに動力性能をバランスさせたのが、出来のいいハッチバックだ。

荷室は通常時455リッターの容量を持ち、後席のバックレストは2対1対2の可倒式なので積載能力は高そうだ

もうひとつは、軽快感。1970年代にハッチバックが欧州で登場したときは、セダンステーションワゴンの重厚長大さに対するアンチテーゼとして歓迎されたのだった。

メルセデス・ベンツ「B180」は、4430ミリの全長に対して2730ミリという長いホイールベースを備える。同社のAクラスと基本プラットフォームは共用しているため、ホイールベースは同一で、全長では10ミリ長いだけだ。

全高は、いっぽう、Aクラスより130ミリ高い1550ミリで、SUVよりに振ったパッケージングといえる。外観はとりわけCピラーまわりの面の作りかたなどに、同社のSUV「GLC」に通じるものを感じた。それが力強いイメージを与えているように思う。

ボディ外寸は、最近のクルマに詳しいひとなら、おわかりのように、けっして小さめではない。4430ミリの全長は、2005年の初代Bクラスと比較すると160ミリ延長されている。他社の製品でみると、たとえば、レンジローバーの新型車、イヴォークより59ミリ長い。

左:フロントマスクまわりのイメージはAクラスに近い/右:全体にキャラクターラインに頼らず面の表情で個性を出している

エンジンは、ボディに対してコンパクトである。「B180」は1331cc4気筒ガソリンエンジン搭載だ。100kW(136ps)の最高出力と、200Nmの最大トルクを持ち、7段ツインクラッチ変速機を介して前輪を駆動する。この1.4リッターユニットは、充分すぎる力を発揮するのだ。

さきに引例したイヴォークは、430Nmもの最大トルクを発生する2リッターエンジンを搭載しているが、車重は1480kgのBクラスが約400kgも軽い。比較的軽量化のボディの恩恵もあるだろう。「B180」は軽快な加速感を身上としている。

1460rpmから最大トルクを発生しはじめる設定なので、発進してすぐ、意外なほどのトルク感で車体を引っ張っていくのが感じられる。かつ、ダイナミックセレクトというドライブモードセレクターで「スポーツ」を選択すると、“力がある”を通りこして“楽しい”というレベルに突入する。

剛性感を感じさせつつ、操舵感覚はCクラスのような後輪駆動のセダンに近い。左右いずれかに切り込んでいったときの、車体がゆっくりとロールしていく気持よさを味わわせてくれる。最新のAクラスでも同様の感覚を持っているが、Bクラスではより強くスポーティさを身につけているように感じられたのだ。

足まわりの設定も、サスペンションのストロークがたっぷりとられているかんじで、快適だ。低振動と低騒音、それに上で触れたように剛性感の高いハンドリングとあいまって、上質感がある。個人的な感想としては、これまでメルセデス・ベンツが手がけた前輪駆動のハッチバック中、最善の出来だと感じられたほどだ。

左:写真はオプションの「AMGライン」装着車で、さらに「AMGレザーエクスクルーシブパッケージ」が選ばれている/右:後席もおとな2人に充分なスペースが確保されている

室内の居心地もよい。ダッシュボードはタービン型といわれる空調用のエアアウトレットが並んだおなじみのデザインで、Aクラスと同様、大型のTFT液晶画面装備だ。オプションになるが音声による会話型コマンドを受け付ける「MBUX(Mercedes‐Benz User Experience)」が用意されている。

「ハイ、メルセデス」という呼びかけでシステムが起動するMBUXを一人乗車のときに使っていると、機械との一体感ゆえパーソナルな空間にいる感覚をうんと強くおぼえる。独特の雰囲気だ。

後席はスペース的におとなふたりに充分である。シートはオプションでレザーがあり、同系色2色づかいという洒落た感覚のコンビネーションもある。このクルマを家族で使うひとは、家族の構成員に気に入ってもらえそうだ。私が買うなら、加えて、ガラスルーフのオプションを選びたい。

ハッチバックがいいところは、東京などの市街地に多いタワー式パーキングが使えるし、取り扱いが楽な点だ。サイズだって、大きくなっているとはいえ、持てあますほどではない。ハッチバック卒業生に、もういちど戻ってみるのもいいかな、と思わせる出来である。

価格は「B180」が355万5556円(税別)。2019年秋に導入される予定の2リッターディーゼル車「B200d」は383万6364円(税別)。

小川 フミオ/Fumio Ogawa
慶應義塾大学文学部卒。複数の自動車誌やグルメ誌の編集長を歴任。そのあとフリーランスとして、クルマ、グルメ、デザイン、ホテルなどライフスタイル全般を手がける。寄稿媒体は週刊誌や月刊誌などの雑誌と新聞社やライフスタイル誌のウェブサイト中心。

問い合わせ情報

問い合わせ情報

メルセデス・ベンツ・ジャパン