LEXUSは2019年9月に、ラグジュアリークーペ「LC」の特別仕様車“PATINA Elegance”とインテリジェントスポーツセダン「IS」の特別仕様車“I Blue”を発売した。LCにはテレーンカーキマイカメタリック、ISのほうにはヒートブルーコントラストレイヤリングという独特のカラーが施されている。

これらの車のカラーデザインを担当したのが宍戸恵子氏と伊藤淳子氏だ。車の色に対するLEXUSの並々ならぬこだわりを宍戸氏はこう語る。

「私が手掛けたのはLCのテレーンカーキマイカメタリックです。エレガントであって、なおかつ日本らしいわびさびを感じさせる、そんな色合いを意識しました。技術的にいうと、大きな粒子を使って全体的に立体感が出るように仕上げています」

さらに、光の当たり方によって見え方が変わるのも、特徴のひとつだという。

「お客様が車に乗るのは、いつも晴天の太陽の下とはかぎりません。曇りの日もあれば雨もあります。また、同じ駐車場に置いてあっても、朝と夜とでは光の具合が異なります。そういったありとあらゆる場合を考慮し、どんなシチュエーションであっても魅力的に見える、さらに、時間や環境の変化とともに変わっていく色合いを楽しんでいただけるようにもなっています」

まず、車が遭遇するであろうさまざまな条件を、コンピュータを使って再現し、これだというカラーのイメージを思い描く。そうしたら次は、それを実際の塗装で再現するため、ラインの技術者や塗料メーカーの意見も聞きながら、試行錯誤を重ねていく。こうして、ようやく納得できるボディーカラーに仕上がるまで2年近くかかったという。

ちなみに、宍戸氏自身が“PATINA Elegance”をいちばん美しいと感じるのは、「夜の立体駐車場」だとか。

夜の駐車場が似合うという“PATINA Elegance”の立体的な造形と色の表情。すっきりと奥深い感じが伝わるだろうか

ISを担当した伊藤氏にもきいてみよう。

「ISはスポーツセダンですから、やっぱりいちばんふさわしいのはスポーツ専用色のブルーなのです。サーキットの黒いアスファルトの上をシュッと走るとき、ブルーがピカッと光る、そういう状況をイメージしました」

今度のヒートブルーは鮮やかな深みが実に特徴的だ。この色を出すために「4コート、2ベイク」という、同じ工程を2度繰り返す特殊な塗装を行っているという。

こちらは見るからにスポーティさを感じさせる「IS」の特別仕様車“I Blue”

LEXUSの魅力的なカラーリングの源泉が、カラーデザイナーの感性であるのは間違いない。彼女たちはどうやってインスピレーションをキャッチしているのだろう。

「I Blueには、陰になれば色を深め、光を受ければ鮮やかさが際立つ『藍本杢ステアリング』を採用しています。この複層的な藍色は、天然のウォールナットを一つひとつ削り出して、塗装を何層も重ねることでつくりだしました。私はもともと自然本来の風合いや色の移り変わりに非常に興味があり、それをそのままレクサスのカラーリングに生かしている感じです」(伊藤氏)

宍戸氏はこう締めくくってくれた。

「LCは内装に、柔らかい特別な革を使用しています。ただ、車というのはドアを開ければ雨も入りますから、耐久性も内装の重要な要素であるのはいうまでもありません。柔らかさと耐久性、この二律双生が、LEXUS車の内装の大きなテーマなのですが、今回私が注目したのは革の柔らかさのほうです。私はプライベートで、日本唯一の馬具メーカーであるソメスサドルの革トレイを使っています。これは、もともと肌色でした。それが、使っているうちにだんだんと味わい深い色に変わってくる。これはまさに「使い込まれた表面の艶」を意味するPATINAのイメージにぴったりじゃないですか。シチュエーションによって変化する色合いを楽しむという着想は、ここからきています。愛用している銅の茶筒もまた経年変化を楽しむもの。私の身の回りには、こうした品が多いように思います」

宍戸氏のインスピレーションソースである、革のトレイと愛用の銅の茶筒。どちらも経年変化による風合いの変化に魅かれるという

text:Masayuki Yamaguchi
photograph:Naomi Kawakami