高級時計の歴史が見える――ブレゲ BREGUET

「クラシックオーラムンディ 5727」。6時位置の小窓で都市名を選ぶと時針がジャンプ、その都市の時刻を示す。日付や昼夜表示も連動。12時位置の日付表示には日付ディスクの動きに随行するレトログラード針をセット。アンクルとひげぜんまいはシリコン製。●18KRG。ケース径43mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。743万円。〈ブレゲ ブティック銀座〉

ブレゲの創業者アブラアン=ルイ・ブレゲがパリで頭角を現した18世紀後半、高級な時計といえば、寓話の世界や戦勝記念のモチーフ等を装飾したケース、時間目盛りのローマ数字と分目盛りのアラビア数字が配された文字盤、華美な意匠を持つ短くて太い針、というものだった。そんな時代の中で、駆け出しの時計師のころから機構にも外装に対しても無駄のない洗練されたものを求めていたブレゲは、読み取りやすい上品なアラビア数字と、月の満ち欠けを思わせる丸い穴の空いた輪を先端に持つ細長の針を考案する。現在も高級時計に使用されるブレゲ数字とブレゲ針の誕生である。1783年のことだ。またギヨシェ彫りを考案したのもこのころのことで、彼はこの手法をまずケースで試みた。ケース表面にシルクのような光沢をもたらし金属の反射も抑えるギヨシェは、手にしたときの感触も素晴らしく瞬く間に広まった。この美しい装飾が一九世紀になると文字盤へ転用されていくのである。


重厚感の演出や絢爛豪華な装飾が重宝された時代に、シンプルで見やすく、なおかつエレガントな意匠を求めたアブラアン=ルイ・ブレゲは、技術者として超一流だっただけでなく、感性の面でも先進的なセンスを持つクリエーターだった。その創業者のDNAを受け継ぎモダンな進化を遂げた現代のブレゲの新作がこちら。内部機構に関する発明精神に加え、書体や針の太さ・長さ、ギヨシェのパターンにより古典的でありながら古めかしく見せないセンスが現代のブレゲらしさだ。

「ヘリテージ ビッグデイト5410」。3種のギヨシェ装飾と3層の立体的なダイヤルが織り成す奥深い表情が特徴的。大型日付表示を備え、脱進機にシリコン素材のひげぜんまいを採用した自社製キャリバー516GGを搭載する。●18KWG。ケースサイズ45×32mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。311万円。〈ブレゲ ブティック銀座〉
「クラシック7147」。ケース厚は6.1mm。アンクルとひげぜんまいにシリコン素材を用いた自社製のキャリバー502.3SDは厚さ2.4mm。薄型でシンプルなデザインに幾何学的なギヨシェ彫りの美しさが映える。ケース側面にはブレゲ得意のフルート装飾。●18KRG。ケース径40mm。自動巻き。アリゲーター・ストラップ。228万円。〈ブレゲ ブティック銀座〉

※本記事は『PRESIDENT』2016年7.12号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。