アートな感性と共にある――シャネル CHANEL
ブラックとサークルがあやなすモダンアートのような美しさ
機械式時計の伝統にモダンな新風を吹き込んだのがシャネルだった。2000年、シャネルはブラックセラミックをまとった「J12」を発表。3年後に発表したホワイトセラミックモデルと合わせて、高級時計の世界にブラックとホワイトという新しい感性を持ち込んだ。さらにシャネルのモダンな美意識からすれば、腕時計にとって不可欠なリュウズでさえJ12の美しいラウンドフォルムを乱す突起物に映ったのだろう。今度はリュウズがサファイアガラスから垂直にせり上がる「J12 レトログラード ミステリユーズ」を発表。機構的にもハイレベルなメカニズムで時計関係者を感嘆させた。
こうした流れからすれば、機械式ムーブメントの伝統的な輪列や装飾はシャネルらしくない、という考えに至るのも当然といえば当然。昨年披露した初の自社設計・製造のムーブメントは、ニュアンスの異なるブラックがつくる表情、歯車や円形ブリッジの大小、そしてそれらパーツの絶妙なレイアウトが相まって、さながらモダンアートのような美しさだった。そのキャリバーを載せた今年の新作が上の限定モデル。ブラックとサークルモチーフがあやなす美しさは、これぞシャネルの本領だ。
※本記事は『PRESIDENT』2017年6.26号に掲載された記事をweb用に再編集したものです。