Editor's Note

創業家3代目のルイ・カルティエが創造した世界初の男性用実用的腕時計「サントス」に始まり、「タンク」そして「パシャ」など、男性用腕時計のデザインを切り開いてきたメゾンであることは自他共に認めるところ。21世紀になると、ローマ数字やギヨシェ装飾といった古典的な意匠を用いながらもコンテンポラリースタイルを次々と創造し、時計専門ブランドに肩を並べるほどの充実した機械式のコレクションを構築した。同時にベースキャリバーや複雑機構の内製化にも取り組むなど、時計開発の幅広さ・深さ、そしてそのスピード感にグランメゾンの力量をあらためて思い知らされる。

創業年
1847年
創業地
フランス パリ
拠点
フランス パリ

Brand History

1847年、宝石細工師だったルイ=フランソワ・カルティエが師から受け継いだ工房でジュエラーを開いたことが起源。創業直後からフランス国内では王室御用達となり、当時の社交界の中心にあったナポレオン3世の妃、ウジェニー皇后がオーダーしたことなどから、その名声はヨーロッパ全土へ広まった。創業家3代目のルイ・カルティエの時代にはロンドンやニューヨークにも支店を開設。また、ブラジル人飛行家アルベルト・サントス=デュモンの「飛行船の操縦桿を握ったままでも時間を知ることができたら……」という要望に応えて1904年にレザーストラップ付きの時計を発明。これが世界初の男性用腕時計となり、後にカルティエの名品「サントス ドゥ カルティエ」となる。第一次世界大戦で登場した戦車の無限軌道に着想を得て「タンク」を創造したこともまた、ルイの非凡の才を物語る。
以降、ジュエラーでありながら腕時計デザインでも先駆的な役割を果たし、1983年には女性向けの大胆な角型時計「パンテール ドゥ カルティエ」、85年には独創的なリュウズプロテクターを備えた防水時計の「パシャ」を発表。93年にヴァンドーム グループ(現リシュモン グループ)設立。98年、過去の名作を現代的にリファインした機械式のライン「コレクション・プリヴェ・カルティエ・パリ(CPCP)」を展開し、機械式時計製造が本格化する。21世紀になるとアーチ形のリュウズガードを備えた「バロン ブルー ドゥ カルティエ」、エレガントスポーティーの「カリブル ドゥ カルティエ」、角型リュウズ付きの「クレ ドゥ カルティエ」、そしてクッション形ケースの「ドライブ ドゥ カルティエ」を相次いで発表。ムーブメントの内製化や複雑機構開発、メンテナンスフリーに向けた新素材の開発にも並行して取り組み、創造性と技術の両面で力量を発揮している。