Editor's Note

「私の手の中にはスイス時計の500年分の歴史がある」と、創業者のミシェル・パルミジャーニは話す。独立時計師時代にミュージアムピースの修復からスイス高級時計に関する膨大な技術やノウハウを習得したミシェルは、ブランド創設後、それらをもとに何百年が経過しても修復に値する時計をつくることを信条としている。その好例が1996年ブランド発足時につくられ、2017年に刷新されて復活した「トリック」である。一方で、時に見る者にサプライズを与える時計もこのブランドの醍醐味。04年から続く「ブガッティ」シリーズ、16年発表のコンセプトムーブメント「センフィネ」などがそれだ。500年分の歴史から得た技術や知識は、つねに未来へと向いている。

創業年
1996年
創業地
スイス フルリエ
拠点
スイス フルリエ

Brand History

 1950年、スイスのクヴェに生まれたミシェル・パルミジャーニは時計学校を卒業後、グランマスター(熟練時計師)のもとで修業する。76年にアンティーク時計の修復工房を開設し、修復不可能といわれたブレゲの同調時計を修復するなど天才的な修復師として名を上げる。80年、スイス医薬品企業グループにかかわるサンド・ファミリー財団が所有するポケットウォッチ、クロック、オートマタから成る一大コレクションの修復師となる。同財団の長だったピエール・ランドルトはミシェルの天才的な技術のみならず、中世から連綿と続く時計史についての知識の深さに圧倒された。一方のミシェルは、物事を長期的視点で考え、何よりも社会的に価値があるかどうか、スイスの歴史的・文化的な価値に沿うものであるかどうかをビジネスの判断基準にするランドルトの哲学に共鳴した。この二人の出会いから、1996年にパルミジャーニ・フルリエが発足する。目先の利益にとらわれない経営方針から、外装、ダイヤル、そしてムーブメントの部品一つから自社で製造できるマニュファクチュール(自社一貫生産)体制の構築に早くから注力し、2005年にはスイスでもわずか数社しかつくれないひげぜんまいも一貫製造できる体制を整えた。
ブランドの根幹を成すのはクラシシズムにのっとった上品な時計だが、2004年からはスーパーカーのブガッティ社とのパートナー契約による革新的な複雑時計を製造。16年には45日間ものパワーリザーブを目指すコンセプトムーブメント「センフィネ」を発表するなど、先進的な開発にも意欲的に取り組んでいる。